巫女と神様

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 平静を装ってはいたけれど、うっかり距離感を間違えて気安く触れてしまっていたことが何度もあった。  雪を見上げていたのを見かけたあの日も。  他の木より早く花を咲かせた桜を『狂い咲き』と呼ぶ誰かの言葉が聞こえて何かに耐えるような表情を浮かべていたあの日も。  さっき、満開で見頃になるはずだった桜の花が前日の風と雨で散ってしまった様子を眺めていた時も。  泣きたいのに泣けない、そんな表情を浮かべているあなたを放ってはおけなかったの。  あなたが普段通りの表情に戻ってから、距離が近すぎることを自覚して、どうしてこうも気になるのかとずっと不思議だった。  けれど、その理由は、やっとわかったわ。  あなただから、だったのね。  距離感を間違えて触れていたことを自覚して慌てて頬から手を離したあと、体の向きを変えようとしてうっかり触れてしまった私の手をあなたが掴んでくれた時に気づいたの。  前世で巫女だった私がお慕いしていた神様は、こんなにも近くにいたこと、それに混乱して。  一度離され、すぐに繋ぎ直されたその手が、その、恋人繋ぎ、だったことにも困惑して。  恥ずかしいけれど、嬉しくて。  ……期待、しても、いいの?
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