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あっと思った時には唇が重なっていた。
久しぶりの彼の唇は冷たかった。
のしかかってくる彼の細腰を抱きながら柾冬は目眩しそうになる。
「パスタより今はあんたが欲しい」
1度唇を離して真上から柾冬の目を覗きこみ、彼が言う。
冴え冴えとした冷たい宝石を思わせる漆黒の瞳は、有無を言わさぬ激しさを秘めている。
この瞳に逆らえる人間がいるだろうか。
柾冬が手を伸ばしてその冷たい頬に触れると彼は目を閉じた。
艶やかな黒髪がさらりと揺れる。
「あんたの手、あったかい」
「君が冷たすぎるんだよ」
気温に関係なく彼の体はいつもひんやりしている。
「あっためてよ」
そう言うなり彼は再び柾冬に覆いかぶさり、噛みつくような激しいキスの雨を降らせる。
柾冬は強い腕で彼を抱き寄せると体勢を変えた。
「仰せのままに」
今度は柾冬が彼を組み敷く形になり、その細く白い喉元に吸いついた。
跡がつかないよう加減しながらついばむような口づけを重ねると、次第に彼の息づかいが荒くなる。
細い腕を柾冬の背に回し、シャツに爪を立ててしがみつきながら甘い囁きを漏らす。
「もっと……」
それに応えるように柾冬が強く彼を抱き、激しい口づけを繰り返すと白い喉が反る。
「もっ……と……」
しばらくそのまま彼の唇を貪ったあと、柾冬は軽々とその体を抱き上げた。
寝室まで移動する間も彼は柾冬の首筋や唇にキスをした。
「早く……」
寝室に着くとふたりは服を脱ぐ間も惜しんで抱き合った。
「早くあんたの熱で俺を溶かしてよ」
射るように強い眼差しで彼が囁く。
柾冬は黙ったまま黒く濡れた瞳にキスをすることでそれに答えた。
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