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体を重ねる時、彼はいつも唇に手の甲を押し当てて声を殺そうとする。
柾冬が手をどかそうとすると彼は身を捩って抵抗した。
「声が聞きたい」
耳元に低く囁くと、彼は首を横に振る。
さらに深く彼の中に侵入しながら柾冬は優しい口づけを繰り返す。
「……優しく……しないで」
荒い呼吸の合間に彼が小さな呟きをこぼす。
それを聞いて柾冬はさらに優しく彼に触れた。
「……あッ」
強い快感に眉根を寄せ、思わず漏れ出た自分の声に驚いたあと、彼は柾冬を睨む。
「優しく……するなっ……て……」
「どうして?」
言いながら柾冬は自分の体の下で切なそうに身を捩る彼の小さな白い顔を、片手でそっと包み込む。
「酷くして……もっと」
「嫌だ」
柾冬は彼の唇に触れるか触れないかギリギリのところで囁く。
「優しくしたい」
「なん……で……」
「君のことが大切だから」
柾冬は鼻が触れ合うほどの至近距離で真っ直ぐに彼を見つめた。
「……そういうの……いらない……」
彼は綺麗な瞳をふいと逸らす。
柾冬は焦れたように彼の瞳を追う。
「酷くしてくれないなら……もう、来ない」
柾冬から顔を背けながら彼が囁く。
「優しい愛撫しかくれないなら……他に行く」
それを聞いて柾冬は目を見開く。
彼の唇から出た他という言葉に胸がざわつき、自分以外の誰かに抱かれる姿を想像しただけで頭に血が昇った。
「だめだ」
柾冬は彼の細い両手首を頭の上で押さえつけ、下から突き上げるように動いた。
「……ああッ」
ひときわ高い声をあげて彼が身を反らす。
「俺以外に抱かれるなんて……許さない」
激しく彼を責め立てながら柾冬はその耳元に低く囁いた。
「絶対に許さない」
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