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満開の桜の木の下で
「お、あの桜すごいな」
トオルがベランダから下を見て言う。
「ちょっと、サボってないで手伝ってよ。夕飯までに片付かないと、ご飯作れないでしょ」
あたしの言葉に、トオルは笑いながら
「何だよ、引越の日くらい、メシ作んなくていいって。探索がてら、近所に食いに行けばいいじゃん」
と、アッサリ返す。「それよか、あそこ見てみ」
「だからって、サボっていい理由にはならない」
言い返しつつ、あたしはトオルに呼ばれるがまま、ベランダに出た。
新婚とはもう言わないのかもしれないが、結婚してそろそろ2年で、子供ができる前に引越をしようとトオルとあたし、ユカが選んだこのマンションはタワーマンションではないものの、10階の最上階の部屋からの見晴らしは最高だった。駅からも遠くない住宅街で、子供ができたら良い環境だろうと考えてふたりで選んだ場所だ。
「わ、大きい桜」
「な。個人の庭にしては立派だよな」
住宅街なので、近くに同じような高さのマンションもあるし、一軒家もある。その中の一軒にとても大きなソメイヨシノの木があるのが見える。満開に近くて淡いピンクの大きな塊が良く見えた。
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