きみとぼくの歪んだ初恋

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九条貴斗は恋をしない。 放課後の教室。 締め切られた密室。 詰襟の少年たちが一人を囲っている。 その中心で座り込み奉仕する九条は ぐじゅぐじゅと口の中で育てた肉棒を咥えながら相手を見遣る。 「……んっ」 彼はこの教室のペットだった。 始まりは突然だった。 委員会終わりに呼び出された視聴覚室。 真っ暗な部屋。 スクリーンに映し出された幼い肢体。 「……え」 その映像には見覚えがあった。 快楽に溺れくねる腰の動き。 絡み合う舌。口からこぼれる聞きなれた嬌声。 過去の光景とはいえ褪せない悪夢に怖気が走る。 「や、だ……止めて。おねが、……これ、やだ」 切れ切れに吐き出される否定。 立つ力すら失ってへたり込む九条の背を抱いたのは同級生の彼。 俯いて耳をふさぐ九条の髪を掴みあげ正面を見据えさせる。 「九条、これだーれだ?」 手に掴まれ身体を逸らされると前を向かざるを得ない体制になる。 目を逸らし続けた過去の映像が否が応でも広がった。 「……あ、あぁっ」 真冬の川に落ちた時のようにぶるぶる身体が震える。 痛めつけられた時の恐怖が蘇った。 そして腹に溜まる下卑た欲望。 ――嗚呼、これは昔の僕だ。 震える九条を抱きしめながらクラスメイトは話を続ける。 「これ撮ったの俺の叔父さんなんだよ。懐かしいよね?」 会わせてあげよっか、と恐ろしい言葉を耳元に注がれ身体が強張る。 まだ産みの親と共にいて身売りを強要させられ、 それが普通になっていたあの頃。 快楽に依存し、嫌と言いながら現実逃避の為に欲を求め続けた浅ましい自分。 きっと前の客の前に立てば逆らった時の暴力に足がすくみ、 望まれるままに求めてしまう。 しかし、それは養子として迎えてくれた 今の家族への裏切りだと言うのは嫌でも分かっていた。 九条が必死に首を左右に振れば嘲るような笑い声が聞こえた。 勝手にぼやける視界を舌でなぞられ恐怖する。 「ッ……な、なんでもするから、ねぇ、おねがい。おじさんにぼくのこと言わないで……ッ、誰にも、このこと」 震える声で懇願する九条を嘲笑するクラスメイトはそっと彼に顔を近付けた。 田舎の学校にある序列が崩れる瞬間、人が本性を現した時の醜い笑顔。 九条は色んな人が浮かべるその顔に覚えがあった。 「九条次第かなぁ。  ねぇ、本家筋の養子が分家の長男に頭下げるってどんな気分?」 そう言って彼は九条の頬をなぞって頬に口付ける。 求められていることを理解して九条は頬に触れる彼に手を重ねた。 すると髪を掴んでいた手が九条を撫で、両頬を包み込まれる。 触れ合うことは得意ではない。 しかし相手が望むのならば答えるしかないだろう。 相手が望むことに応えるというのが得意にならざるを得ない 生活を歩んできた九条にとって 彼の望みは簡単に透けて見えた。 この空間でだけ自身が彼の従者になることを望まれている。 そう理解した途端に心は息を殺し、温度をなくした。 脳は考えるのを止めて、九条は目を伏したまま彼に自ら口付ける。 開かれた唇の隙間に入り込み、 舌を絡ませ唾液を混ぜ合わせ舌を絡めるのも受け入れた。 時折こくりと喉を鳴らせばペットのように黒髪を撫でられ クラスメイトの名前も知らない彼に愛玩される。 「家とかそんなの関係ないよ。……お願いだから誰にも言わないで」 名前も知らない彼の喜ぶ言葉を読み取って口にする。 黒く濡れた瞳がスクリーンの青やかな光に照らされてきらきらと光る。 早くこの身体を割り開きたい。 もっともっとこの手で欲に沈めてやりたい。 歪んだ欲求が彼の中に去来していくのを感じながら 九条はクラスメイトに縋るような視線を向け続けた。 「じゃあさ、今日から俺のペットになってよ。できるよね、九条」 押し倒した手首の細さと一筋零れた涙がひどく儚く映ったようで 押し倒した彼が、自分を見ながら息を呑むのが分かった。 九条に選ぶ権利などない。 その日から、九条は彼と彼らのペットになった。 放課後になると彼に呼び出された。 鍵をかけた教室で自ら制服を脱ぎ、一糸纏わぬ姿でぺたりと床に座り込む。 真っ白な肌があらわになる。 俯いた黒髪から覗く濡れた瞳が所在無さそうに揺れる。 九条の瞳は微かな情欲の色を含んでいた。 「おいで」 決して強い言葉を使われないよう、従順な振りをした。 彼が九条自身の見た目に魅了されていることを分かっていて 愛玩されるためだけに抵抗をしない不慣れなペットを演じ続けた。 言われるがままに今日もふらふらと彼に歩み寄りキスをする。 唇を啄み、舌を入れることを許されてからおずおずと舌を差し込み絡め合う。 口移された多量の唾液を飲み込めば頭がぼんやり霧がかる。 早く欲しい。 快楽への期待でどきどきと心拍が跳ね上がる。 幼少期の刷り込みからか九条は快楽に極端に弱かった。 彼の膝に座り頭を抱くようにして胸への愛撫をクラスメイトの彼に強請る。 「胸なめてほしい、です」 恥ずかしがるように声を震わせ、素直に九条は欲望を口にする。 「エロい事して欲しいのに恥ずかしがるんだ? かーわい」 言葉と共に色素の薄い桃色の乳首を唇で挟まれ、 先端を舌でざらりと撫でられた。 もう一方は親指と人差し指で擦り合わされて思わず背をしならせる。 「ぁっ……はッ、ぅ」 「もう反応してる」 とろとろと先走りを垂らす九条の性器を親指の腹でいじめながら彼が笑う。 胸から口を離され、淫らに揺れる腰を抱かれると 焦れたように九条が彼の肩口に頭を寄せた。 「きもちい?」 「あっ、いい、です。いいからぁっ」 止めないで、と泣きそうな声で懇願する。 焦らすように内腿を撫でる指に自ら性器を擦り付ければ浅ましいと叱られた。 「我慢してみせて、九条」 「ぇ、あっ、……あぁっ」 勃ち上がった性器にコンドームをぐるりと巻かれて締め付けられる。 締め付けられた苦しさで九条が喉を鳴らせば後孔に指を二本付き入れられた。 毎日の行為で慣らされたそこはすんなりと異物を受け入れる。 「やっ、やぁ……くるしいのやだぁっ」 「気持ちいいの間違いでしょ?」 「はっ、ぁっ、ああっ、だめっ、あっ、あっ」 短いリズムで指を出し入れされれば勝手に腰が跳ねる。 指を増やさればらばらに動かされると九条の口から甲高い声が上がった。 ぐちゃぐちゃと鳴る音が室内に響くと九条の頬に羞恥が走る。 「九条、挿れられると思って慣らした上に濡らしてきたんだ? イイ子だね」 「っ、いわない、でぇっ……ああっ、きもちい、きもちいいよぉ……っ」 快楽を逃せず彼の頭を抱えたまま九条が腰をくねらせると 性感帯を押し潰され、あられもない声が上がる。 精を吐き出すこともできず、性感を刺激されると 九条の理性は簡単に焼き切れてしまう。 自ら足を広げて彼の方に手を付くと腰を動かし相手を誘った。 動くのを止めて固定された手を自身の良い場所に突き動かせば 腰から砕けるような快楽が襲いくる。 「なか、はやくいれてぇっ……ほしい、ほしい、からぁ」 「ねだり方教えたよね?」 「ぅっ、ふ……っ」 子供のようにぼろぼろ泣きじゃくると指を引き抜かれて胸を引っ掻かれる。 暴走した熱で制御の利かない九条は 彼の膝から降りて座り込むとゆっくり顔を伏せた。 震える手で相手のベルトのバックルを外すと口でジッパーを下ろす。 下着越しに唇で性器を食むと彼が九条の黒い髪を撫でた。 「ご奉仕させて、ください。おっきくなったの、僕の中にいれて。  いっぱい突いて、ください。僕、おしり犯されたい、です」 「イイ子。ご褒美ほしい?」 幼少期、何度も繰り返された呪文を囁かれてキスをされると 頭がくらくらする。 九条が頷くと頭を撫でる手が離れた。 それが合図のように九条は下着を唇でずり下げて先端にキスをする。 「んっ、ぁ……ふっ、ぅ……んっ、んんっ」 おずおずと舌を出し、唾液を絡めてゆっくり喉の奥へと性器を導いた。 喉の奥を圧迫されるのがとても苦しくてまた涙が溢れたが 機嫌を損ねると嫌と言うほど嬲られる。 それが嫌で必死に頭を動かし、ぬるつく舌を絡ませると 腰を動かされて喉の奥を突かれた。 ぞくぞくと身体が戦慄し、力が抜けそうになる。 口からはぼたぼたと唾液がこぼれて床に落ちた。 「ひっ、ぅ……んぐぅ、ぅっ……んん、んっ!」 もう充分だろうと言いたげに相手を見上げると相手は九条の頭を押さえた。 そのまま無遠慮に腰を動かされる。 「九条、出すからさぁ、精液飲まないで舌に乗せて俺に見せてよ」 「っんんッ! んーッ!」 九条の悲鳴すらも彼にしてみれば 喉の奥を締め付け震わせる雄を膨らませるだけの刺激にしかならない。 酸欠からすぼまった口が微かに裏筋を刺激して 彼は九条の咥内に精を吐き出した。 九条はといえばようやく入ってきた酸素を取り込みながら 呆然とした表情で相手を窺い見る。 涙に濡れた目元は酸欠で赤くなっており、 口は飲み込みきれなかった精液で汚れていた。 「舌出して」 言われるがまま口を開けて九条は羞恥から目を瞑る。 青臭い独特の匂いと苦みが舌を刺激する。 正直今すぐにでも許可が出たら吐き出してしまいたい。 それなのに彼は九条の口に指を突っ込むと 舌の上で馴染ませるように精液を塗り込めた。 「九条苦いの嫌いだよね」 「うぅ、っ……」 頷きたいが下手に動くと口からまた精液を零してしまう。 怒られるのが嫌で涙目で相手を見るとようやく指が引き抜かれる。 「飲み込んで」 言われるがまま唾液で薄まったそれを喉を鳴らして飲み込めば 嘲るように一笑される。 「本当に飲むんだ。男の精液なんてよく飲めるね」 「おいしくは、ないです。口でするの好きじゃないから」 「無理矢理喉犯されて勃起させてるやつがそんなこと言ってもなぁ」 まだ一度も達していない戒められたそこは ぴたりと腹につくほどに硬くなり震えている。 一度出したいと相手に媚びたが適当に流された。 このセックスには九条に拒否権も決定権もない。 精液を飲み干した口でのキスは許されるはずもなく、 仕方なしに萎えるどころかまだ起立している彼のそれを もう一度唇で愛撫しようする。 すると伏せたままだった身体をうつぶせにするよう命じられた。 「……あの」 硬い板でできたタイルの床の感触を 背中に感じながら九条は不安げに彼を見上げる。 足を割り広げられると羞恥から顔を隠して息を殺した。 「足、自分で持っておさえてて」 「……でも」 「できないの?」 「……」 じわじわと涙が溢れかけた瞳を隠していた手を自身の足へと絡ませる。 自ら足を割り開いた体勢が恥ずかしくて耳も頬を赤く染まった。 「あんまり、みないで……」 羞恥で消え入りそうな声でそう言うと彼が笑ってスマホを取り出す。 思わず足から手を離してしまいそうになるが 動くなと尻を打たれて結局抵抗はできなかった。 「……や、やだ。写真撮るのはやだ……ッ。お願い、やめてくださいっ」 「じゃあムービーにするから」 もっと嫌だと叫びそうになるが 戒められたままの中心をやわく踏まれて声を失う。 相手が何をしたいのかわからない。 ただ逆らってはいけないと自分を守る本能が強くそう告げていた。 「ほんと、本当にやめて。逃げないから、なんでもするから……っ」 「そういうの信用できないんだよね。俺」 ぐり、と先端を爪先で抉られ甘い声が漏れる。 泣きながら嫌だと頭を振ればリズムを付けて中心を踏まれる。 「ねぇ、九条。俺に向かってペットにしてくださいって言ってみてよ。  上手にできたらイかせてあげる」 「え」 思わず声が漏れる。 それが不服だったのか首を掴まれ強く絞められた。 「だってもう九条は俺のペットでしょ?  なんでも言うこと聞いてくれるって言ったよね」 「だけどッ」 「おじさんに調教し直してもらう?」 「やだ……っ、やだ。それ、やだぁ……っ、許して、ゆるしてくださ……っ」 「約束守れないならお仕置きだよね、ヤリ友とのグループチャットに送るわ」 足から手を離し、自らの顔を覆い子供のように泣きじゃくる。 そんな九条を冷めた目で見る彼は足を引き上げるとスマホを弄った。 カシャリとシャッター音がして九条は縋るように相手を見る。 「送信完了。顔隠しててもこれじゃすぐわかっちゃうだろうな。ご愁傷様」 「ごめんなさいっ……! ごめんなさい、誰にも言わないでっ!  ごめんなさい、ゆるしてっ……おねがい、だからぁ!」 「喚くなよ」 ぽいとスマホを鞄の方へ抛り捨てた彼が冷たい声で笑う。 腕を一纏めにされ腰を高く上げさせられる。 「明日から学校のみんなに可愛がってもらおうな。九条」 「いや……っ、やだ。やだぁ。ああっ」 待ち望んだ熱が内側に入り込んできた。 濡れた音と九条の悲鳴じみた嬌声が教室に響く。 結局その日は一度も射精を許されず、中を隅々まで犯され、 絶頂を強要された。 その日の放課後は彼以外の人影が見えた。 同級生が二人、後輩が一人。 九条は震えながらも彼らの前に立つ。 制服越しにいくつも視線が突き刺さり、それだけで九条は泣きそうになった。 「いつもみたいに脱いでよ、九条」 言われるがままに制服に手をかける。 震える手で手惑いながらボタンを外し、 肌を露わにすると彼らが息を呑む音が聞こえた。 シャツから腕を引き抜き、ズボンも脱ぎ捨てる。 白い肌や乳首に視線が刺さるのが分かる。 下着に手をかけた時にはもう誰も音を立てない。 痛いほどに視線だけが突き刺さっている。 それをどうにか無視して 一糸纏わぬ姿で九条はいつものように彼の前に座り込んだ。 「マジかよ」 「九条、本当にペットじゃん」 「ぅ……」 興奮した口調で投げかけられた言葉に九条の瞳がまた潤み、 羞恥から頬が紅潮する。 嫌だ嫌だと叫ぶ心とは裏腹にこれから与えられるであろう快楽に 性器は緩く勃ちあがっていた。 「みんな好きに触っていいよ」 彼の合図でべたべたと少年たちの手が全身に這い回る。 九条は無抵抗のまま両手を後ろについた。 反らされた胸を潰され、引っ掻かれ、吸われる。 赤く色づき芯を持った乳首を引っ張られるとびりびりと腰まで快感が走った。 「ひっ、ぅ……あっ」 「九条、女みたいな声」 「すげぇ、もうべとべとじゃん」 足を擦り合わせて悶えると内股を掴まれ開かれる。 しとどに濡れる中心を指で扱かれると腰ががくがくと震えた。 彼にキスをされると必死に舌を絡ませて応える。 その間も好き勝手に身体を弄られ過敏なまでに反応した。 酸欠で頭がくらくらする。 解放され大きく息を吸い込むと全身が弛緩した。 「可愛いでしょ、俺のペット」 彼に頬を指で撫でられ九条は慣れた様子で手に懐く。 ふと彼の顔が近付いて九条は伸びあがってそれを迎える。 耳をくすぐる彼の声を認識すると九条は真っ赤になって頷いた。 「ぁ……っ」 小さく声を上げる九条は立ち上がって教室の机に座る。 膝を立てておずおずと足を開くと後孔に指をそろりと差し入れる。 「い、いま……慣らすので。あの、ここに……みんなの挿れて、ください」 誘うというにはあまりに拙い言葉を吐き出す九条の声は 頼りなげに震えていた。 ぐちゃぐちゃと音を立てながら内側を慣らしていく。 すんなりと自身の指を受け入れる後孔はすぐに指を三本とも飲み込んだ。 「あっ、ふ……ぅ、うっ、あっ、あっ。んっ……んぅっ」 前立腺を押しつぶすように夢中で中をいじめていると 何人かが九条に近付き手を伸ばす。 そのうちの一人が平たい胸を揉むように掴み、 九条の背に起立したそれを押し付けた。 「なぁ、もう挿れていい? 九条欲しいよね?」 「んっ、ぁ……ほし、いです」 背後から耳を舐められそう言われれば九条は言われるがままに何度も頷く。 見られて性感を中途半端に嬲られた身体はもう限界だった。 机に押し倒され足を持ち上げられると 勃ち上がった性器を後孔に押し当てられる。 「はいっ、て、くる……あっ。んっ、ぅ……んんっ」 身体の中に埋められる欲の熱さと 下腹部から全身に広がる圧迫感に九条は堪らず喘ぐ。 キスをされると夢中になって舌を絡めて首に腕を絡ませた。 「やっべ、気持ちいい」 「あっ、おっきいっ……はぁ、んっ、っあぁッ」 くぐもった声を漏らしながらキスを繰り返し、内側を抉られる。 奥を突かれる度、身体に快楽と衝撃が走った。 それからはもう誰もが箍が外れたように九条に群がった。 九条は抵抗せず後ろから欲を埋められたままの状態で口で、指で、 望まれるがままに奉仕する。 九条の髪も顔も、身体も全てが誰かの欲で濡れていた。 「九条、飲んでね」 「っんぅ……! あああっ!」 遠慮なく口に精を放たれて九条は泣きながらそれを飲み込む。 不意にぐい、と両手を後ろに引っ張られた。 弓なりに身体を反らされると奥まで埋まった欲に 更に深い場所まで犯されて甲高い九条の悲鳴が上がる。 視界が真っ白にはじけて九条は精を吐き出した。 「あっ、ぁっ……あぅ、あっ、ふっ、あ、ゃ、あっ」 欲を突き立てた相手も遅れて精を吐き出すが 絶頂を迎えたばかりの身体を乱暴に揺らされ九条は喘ぐ。 これではまるで人形だ。 どうにも快楽を逃せず頭を振ると涙がぽたぽたと床に落ちる。 肉棒を抜かれると身体はぐにゃりと力を失くし床に崩れ落ちた。 気を抜くと倒れてしまいそうだった。 ふと足元に彼の影が落ちたのでどうにか起き上がる。 どろどろになった九条を見下ろす彼は嘲笑めいた笑みを口元に刻みながら 努めて優しく囁いてきた。 「俺に逆らおうなんてしないでね。  これ本家のおじさんとおばさんが見たら泣いちゃうでしょ?」 スマホには様々な男に犯され恍惚としている今の自分の動画が映っている。 「っ……」 恐怖で体がすくむ。 壊れたように九条が何度も頷けば 愛おしむように精に塗れた九条の黒髪を彼が撫でる。 その手がひどく優しいから九条は泣きながらその言葉を受け入れた。 結局自分に選ぶ権利などどこにもない。 弱い人間は心を殺して従うしかないのだ。 それから何人と交わったか分からない。 ただ放課後に集まる彼らに九条はひたすらに奉仕した。 しかしその日は最初から何かがおかしかった。 「……あの」 「九条、俺に逆らうの?」 制服のボタンに手をかけたまま九条は珍しく嫌そうな声を発した。 目の前には三脚に固定されたビデオカメラ。 何をされるか理解した九条が彼を見遣る。 彼は机に腰かけたまま九条の言葉を殺した。 「でも……」 尚、渋る九条を見ると呆れたような顔で近付く。 そしてその手に錠剤を乗せると肩を掴まれ逃げ道を塞がれる。 「それ飲んで」 「……これなに?」 「飲んで」 有無を言わさない語調に逆らえず錠剤を口に含む。 すぐにペットボトルのお茶を手渡されて一口飲んだ。 「な、に……っ? ヘンになる、これ、や……だぁ」 声を発する為に開いた口が重い。 いや、全身が弛緩している。 身体から一気に力が抜けてずるずると九条は床に座り込んだ。 肩を支える彼に触れられた場所が熱い。 制服の衣擦れすらも刺激に感じてしまうほど全身に熱が回った。 「やだ、なに、や……っ」 「さて九条くん、問題です」 彼はにっこりと笑って涙を浮かべる九条の頬を優しく撫でる。 「早く気持ちよくなれる薬はお茶と錠剤、どっちでしょう?」 「なっ……」 彼だけじゃない。この教室にいる全員が知っている。 そんな悪意に満ちた笑みが九条を飲み込む。 理性がガンガンと熱で溶けていく。 熱い、苦しい。 涙が流れる刺激ですら感じ取るほど急激に過敏になった九条の耳に 悪夢ようなの言葉が落ちてくる。 「お茶は即効性、錠剤は遅効性。まだ意味わかるかな?  まぁ、どうでもいいか。正解なんて」 せいぜい楽しめよ、と囁かれて九条の目の前は真っ暗になった。 熱い、苦しい。熱い。 思考がどろどろと溶け落ちる。 触れられた場所がどこも火傷しそうなくらい熱く、もう何も考えられない。 「あ、ぁっ、あああっ、あっ、あっ、ひっ!?」 律動に合わせて緩んだ口から洩れる声は意味を成さず、 思考は見る見るうちに拙いものになっていく。 九条は弛緩した身体を掴まれがつりと奥まで穿たれると それだけで頭が真っ白になる。 理性のタガを外され、九条はひたすらに快楽を求めて啼いた。 自ら腰を揺らし、手で、口で、彼らに奉仕し言われる言葉を全て肯定した。 「九条、きもちいい?」 「っ……う、ん、うん、気持ちいい、きもち、あ、ぁあっ」 熱に浮かされた黒い瞳でどうにか意思表示をすると 褒めるように頬を撫でられる。 その刺激だけで全身に走る快楽に頭がおかしくなりそうだった。 触れられれば触れられるほどおかしくなる。 吐き出しきれない快楽に九条は溺れた。 跳ねる身体を穿たれながら腰を撫でられる。 びくびくと走る衝撃に九条は泣きながら頭を振った。 「ふぅん。もうヤなんだ?」 泣いている九条の腰を抱いたままだった彼が肉棒を抜き出す。 その衝撃にすら身じろぐ九条はおずおずと彼を振り返る。 「あっ、ぅ……な、に?」 意地悪く笑った彼と彼らは九条の身体を捕まえた。 いくつもの腕によって床に縫い付けられ、腰を高く上げさせられる。 「……ぁ、あ」 「もっと欲しくなるようにしてやるよ」 ぐちゅりと背後にいる誰かの指が中をこじ開けた。 だらだらと後孔から零れ落ちる精液が太腿を伝う。 その気持ち悪い感触を感じながら九条は涙を流した。 「やめ、て……っ」 「だからさぁ、お前に拒否権ないよ」 何度か中を押し広げられ、硬い感触が内側へ入り込んでくる。 「なに、なにっ!?」 「なんだろうね」 半ばパニックになって手足を動かそうとするが 腕に阻まれ九条は泣きじゃくる。 ぐぐ、と入れこまれたものの口から零れ落ちる液体の冷たさに身がすくむ。 「やっ、つめたっ……!」 「大丈夫だって、薬は入ってても所詮はお茶だし」 「飲み残した分、全部飲めよ」 「……ひぁっ!?」 さらさらと流れ込んでくる即効性のそれはすでに内側を変貌させている。 心臓が活発に鼓動し、中が温度を急速に上げていく。 怖くなった。 このままではおかしくなる。 口から唾液を零しながら九条は全身を小刻みに震わせた。 だがそんな状態で放っておかれるはずもなく、 腕が九条をひっぱり上げ彼らのうちの誰かの腹に乗せられる。 ぴたりと後孔に押し当てられた反り返った肉棒に 怯えた九条は瞳を歪ませる。 「なぁ、九条自分で動いて」 「やっ」 「できるだろ?」 「でも、でっ、もっ……」 「なに?」 「なか、あつい、いま、なかいれられたらっ……ぜった、っおかしくなるっ」 喉がカラカラに乾いて舌がもつれる。 しかし今の彼らにとって幼く泣く九条など 劣情を呼び起こすスパイスに過ぎずあっという間に熱を高められてしまう。 赤く熟れた乳首を吸われ、歯を立てられる。 無理矢理熱を灯された中心を擦られ、 口に含まれれば自然と抵抗は少なくなった。 「あー、九条ぐったりしちゃったなぁ」 「あっ、ぅ……うぅ」 「もうこのまま挿れようか」 「やっ、ぁぁあっ」 無理矢理腰を上げさせられ脱力した九条の身体はいとも簡単に穿たれる。 自重でずぶずぶと沈んでいく肉棒はあっという間に九条の性感を擦り上げた。 「や、やらっ、はいっ、はいぅっ……!」 「嫌なら抜いてもいいよ」 「むり、っ……! むりぃっ……!」 暴れようにも身体を揺らせば奥へと肉を誘うことになる。 どうしようもない圧迫感と濡れた音が九条の身体にせりあがった。 身体はむしろ熱いくらいだというのに がちがちと歯の根が噛み合わず全身が震える。 後孔が全てを飲み込んだ時、ふと彼と目が合う。 「たすけ……て……」 縋るように九条が手を伸ばすとその手を取って彼は尋ねた。 「助けてほしいんだ?」 九条が頷く。彼は笑ってキスをした。 絡んだ舌から痺れるような刺激が走る。 壊れた涙腺から涙が零れ落ち、滲んだ視界の中で彼は言った。 「たまんないね、ご立派な本家のご子息様にに泣いてお願いされるなんて。  余計叶えたくなくなるよ」 悪意の籠った微笑に全てを射抜かれて九条は言葉を失う。 もうそこからは何もかもが滅茶苦茶だった。 中へ精を注ぎ込まれた回数はよく覚えていない。 ただ何度も力尽きその何度目かで九条はがっくりと力を失い、 遂には意識を手放した。 「おーい、九条?」 「ダメだ、落ちた」 真っ青になるほど血の気を失った頬を叩かれても反応できない。 冷え切り、ぐったりと動かない九条は全く目を覚まさなかった。 しかしその後も彼らは九条を犯し続ける。 九条が目を覚ました時、校舎は真っ暗な夜だった。 なんとか服を拾い集めて立ち上がると 警備員に見つかり何やら声をかけられる。 「……?」 ただ、何を言われているのか何も分からない。 しばらくして何も聞こえないのだと気付いた。 警備員の初老の男性が心配そうな顔をしているのに なぜだか男と言うだけで怖くて 血の気を失った九条の頬に幾筋も涙が伝った。 結局、その日のことは問題になったらしい。 薬のせいか、ストレスのせいか 耳が聞こえなくなった彼は育ての両親の勧めでずっと学校を休んだ。 耳が聞こえるころには全てが終わった後で ただただ泣くしかできなくなった九条を抱きしめた 養父と養母は彼に転校を勧めた。 「初めまして、九条貴斗です」 そして恋を知らない彼はこの学校で運命と出会う。
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