アンナヘイム村

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アンナヘイム村

 気がついたら朝だった。昨日のあの高波は一体なんだったんだろうって考えた。ここは入り江。アザナレの入り江じゃない入り江・・・・。  ってすごくまずいんじゃない?  とはいっても、海は海おなかが空いたので、海に出て魚を取ることにした。   「よう。娘っ子。お前どこからきたんかい?」図体のでかい漁師の男が訪ねる。  「アザナレから。」  「冗談はよさんかい。アザナレって言ったら、アンナヘイムから6万キロも離れた場所にある村じゃねえか。」 「昨日の津波で流されて着たらここについたの。あたしだって別にここに来たくて来た訳じゃないの!ケセド爺さんの世話とかいろいろあるんだしさ。」 「ケセド爺さんっていうのが、お前の爺さんの名前かい?そんなら、娘っ子。お前の名前はなんっていうんだい?」  「ソエル。っていうか、あたしの名前を聞く前に自分から名前名乗ったらどうなの?それがレディに対するお約束っていう奴じゃない?」  「てめえの顔はレディって顔かい?鼻に砂なんかつけてよお。」  「それはね。さっきまで砂にめり込んでいたんだからしょうがないじゃない!っていうかあんた、自分の名前言ってないでしょ?」  「そんなに聞きたいんなら教えてやるよ。トールっていうんだよ。」  「ふうん。そうなの。」  「なんか文句でもあるんか、つまらなそうな顔をしてよお。」  「別に、なんか聞いて損したなあって思ってさ。食べ物とか食べさせてくれるとかなら良かったんだけれど、私今から魚取りにいくからじゃましないでね。さようなら!」  「そんなに食いたかったら食わしてやるよ。着いてきな。」  「ありがとう。トール。あんた見た目によらず優しいわね。」  「よくゆうよ。」  「かあさん。なんかめし食わせてくれ。」  「どうしたんだいトール。さっき食べたばかりじゃないの!」  「かあさん。オレじゃなくって、こいつがめしを食いてえって言うんだよ。」  「こんにちは!ソエルと申します。」 「どうしたの、あんた砂だらけじゃないの!ソエルちゃんっていうの、あんた一体何をしてたんだい?」 「ちょっとばかし津波に飲み込まれて漂流して、砂にめり込んでいただけで、特に他には何もしていないです。」  「トール、一体子の子はどこの子なんだい?みなれない顔だけれど・・・」  「かあさん。こいつアザナレから来たんだってさ。」  「アザナレっていうとあのアザナレかい?あたしもアザナレの出身なんだよ。今でもケセド様は元気にしてみえるのかい?」  「多分、元気だと思いますよ。村が津波に飲み込まれる昨日までは確実に元気でしたけれどね。今日はこのありさまだからどうにもいえないけれど・・・」  「そうなの・・・。今では村には知り合いはいないけれど、故郷が無くなるっていうのは嫌な話だね。」  「みんな、あたしみたいにどっかに漂着しているといいんですけれどね。ケセド爺さんもどこに行っちゃったのかわかんないし。せっかく爺さんの為に、エビを取ったのに、爺さんごといなくなっちゃってさ。」  「あんたは、ケセド様のお孫さんなの?」  「微妙な所。血の繋がりはまったくないよ。あたし拾われた子だから。でもケセド爺さんと一緒に住んでいるの。たまに礼拝の手伝いなんかもやっている。」  「そう。腹減っているんだったね。沢山おあがりよ。今すぐ作るからね。」  「ありがとうございます。あたし、ものすごくおなか減っているから沢山食べますよ。」
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