海鳴

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海鳴

 私は冷たさで目が覚めた。まだ暗いので夜のようだ。 窓を閉めるのを忘れて眠ってしまったようで、外から雨が部屋の中に入ってきていた。私は、窓を閉めようと思いベッドから立ち上がり、窓の外を眺めていたら、ぼんやりと赤い塊の様なものがこちらに向かってくるのがわかった。それは牛だった。『楼に雄牛が流れ着く日』今日の朝の占いそのままだと思った。  私は、楼に牛が着くと同時に牛の背に飛び乗った。窓の外はずっと海が広がっていた。水は暗く下は見えなかったが、きっと街が沈んでいるんだろうと思った。雷鳴が鳴り響く中、私は牛に振り落とされないようにしがみついていた。牛も私を振り落とさないようにしてくれているのか、静かにゆっくりと、海原を泳いで行った。
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