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津波
ソエルは海に出て魚を取っていた。引き潮の海は宝箱みたいだと思う。色鮮やかな魚達や、貝、そしてカニなどの動きが手に取るように見える。
ソエルは、ケセド爺さんの為に、エビを取ってやりたいと思った。
爺さんは一番エビが好きだと言っていたから。
岩の間に手をつっこむと、ぬるっとした魚の感覚や、エビの尾が跳ねる様子が伝わってくる。ソエルはエビの尻尾をたぐりよせ、胴体部分を強くつかんで、ひっぱった。大きなエビがその手には握られていた。これで、きっとケセド爺さんは喜んでくれると思った。最近は食欲もなく、なにか深く考え事をして、ため息も増えていたから。
多分ケセド爺さんは知らないと思うけれど、ずっと前から夜遅くまで星の動きを観察しているのを、あたしは知っていた。それが多分、寒い夏と実らない作物と関係しているのも予想がついた。
海の水位が高くなっていっている事に気がつき、魚を取るのを止めて、海から上がろうとした時、巨大な津波が襲ってくるのが見えた。あたしは息を止めて水の流れに身を任せることしか出来なかった。
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