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リョサヘイム
ティヘレト姫は遠方から男が来るのを待っていた。
あれはわたくしが幼き頃、夏の暑さに耐えかね避暑をしに、夏でも気温が上がらないニフルヘイムを訪れた時の事。都会の町並みしか知らないわたくしには、ありとあらゆる花が咲き乱れ、のどかな平原が広がる、ニフルヘイムはアツィルトで夢の国に思えた。
そして、わたくしはどんな事をしてもニフルヘイムを手に入れたいと思った。その為にわたくしは、ニフルヘイムから男を連れて来る事にした。一種の人質として。結婚という形を取るが、私はその男を一生愛する気持ちなどさらさらない。
わたくしは、母様のように、男のいいなりになる生活など、送りたくは無かった。
母様は、父上の無神経で残虐な行動によって、精神を蝕まれ、自ら命を絶った。わたくしは絶対に父上を許しはしないし、母様のようにはなりたくない。
今日も父上は愛人達を引き連れて、城内でいかがわしい事をしているに違いない。愛人達のきちがいのように笑う声。父上や父上のお気に入りどもが騒ぐ声が聞こえる。みっともない。
一度、わたくしは、父上が宴と呼ぶ席を見た事がある。
愛人達は着物を腰まで脱ぎ、乳を出し、体をくねらせながら踊りを踊り、周りにいるものに酒をついで歩いていた。
ほずれた衣装、酒の匂い、奇妙な声が今でも頭の中に悪い記憶として残っている。
父はどうして、あんなものをわたくしや母様に見せたかったのだろうかと思った。
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