漂着

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漂着

 「ソエル、大丈夫だったか。心配したんじゃよ。目を覚まさないかい!」私は誰かが必死になって、私を起す声を聞いた。  「ありがとうございます。私を助けて下さったのは、あなたですか?」  「何を言っておるんじゃい!まったく、どこかで頭でも打ったのかい?」  「幸いどこにも怪我はしていないようです。この牛が私を守っていてくれたからかもしれないです。」  「フードを取って、よく顔を見せておくれ、今日のソエルは少し変だ。なんだか、わしまで心配になってきたようじゃ。」  漆黒の髪をたなびかせながら、女は言った。「私はソエルという名前ではありません。ニフルヘイムの領主の家、通称「アンジェラの灰」に住む、『かごの中の鳥』と呼ばれているものです。」  「驚いた!確かにソエルと瓜二つじゃが、髪の色が違う。モウモウまで間違える程似ているとは、この世のものとは思えない程じゃ。」  「モウモウというのはこの雄牛のことですか?」  「かごの中の鳥さんその通りです。わしはソエルを探しにゆかねばならないので、モウモウについて、わしらの家で休んでいて下さい。」  私は、老人の手をとり呼吸を整え占う。  「ソエルさんはこの近くにはもういません。アンナヘイムの村に流れ着いたようです。」  「お前さんは一体何者なんじゃ?」  「私は『かごの中の鳥』国の盛衰を占うものです。」  「聞いた事がある。わしもアザナレの祭司のはしくれ。ニフルヘイムには、すべてを占う事が出来る巫女がいるという話を、昔小耳に挟んだことがある。そして、そのものは外部の人間との接触を絶ち、死ぬまで外には出ることが出来ないはず。お前さんは遠く離れたアザナレの地に立っている。それには深い訳がおありかね?」  「この雄牛モウモウに乗ってみたらここまで来ました。」
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