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囚われの身
ティール達は、物置小屋に閉じ込められている。そこは、暗く空気がよどんだ空間で、明かりといえるものは、上の方にある小さな窓だけだった。
薄明かりの中で見えるものは、タイル張りの床、バケツとモップ、わらで編んだゴザぐらいだった。
「まったくひどい場所だ。一体オレ達が何をしたっていうんだよ。」炊事係のアツィルトが言った。
「アツィルト、腹が減った。何か作ってくれないか?」
「馬鹿言ってんじゃないよ。材料がないじゃないか!」とアツィルトは衛兵のヘイムダムに文句を言った。
「あそこにあるモップとわらを煮て食べるとかどうかい?」医者のリノースが言った。
「リノースまで、やめんか!まったくみんな一体、何を考えておるんだ・・・。」
「ウル大佐、みんな苛立っているんですよ。そう怒らないでやって下さい。」
「そうだな。怒ってもしょうがない、一つ歌でも歌ってくれないか、ブラギ・イェツィラー。」
「わかりました。ウル大佐。『アザレの地に日が落ちて』でも歌わせてもらう事にします。」
巫女は祈る大地の為に
広い野原は草木で茂る
我らの土は豊かな大地
我らの海は豊穣の海原
一日の終わりに命の炎
一日の始まりに命の水
アザレの地に日が落ちて
我らの安らぎ訪れたらん
「ブラギ・イェツィラー、ありがとう。とてもよい歌じゃった。」と大佐は褒めた。
大佐は、公子がずっと小さい窓を眺めているのを不憫に思った。
「ティール様、大丈夫です。我々がついておりますから。」と言ってみたが、とうのウル自体も、これからどうなるのか不安でたまらなかった。
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