「秘めたる思い」

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「秘めたる思い」

 ティールはそっと、鍵がかかった扉を開ける。母上が死んだ時、古ぼけた小さな鍵を、宝石箱から持ち出した。 城中の扉に鍵を差し込んで見たが、合うものがなく、『行ってはならない』と言われていた古い塔の上の扉にそれはピタリとはまった。 今日もまた、この古ぼけた鍵が重い扉を開けてくれる。扉の向こうには愛するものがいる。  ティールはしばし立ち止まり、寝ていることを確かめて、ベッドの淵にこしかけた。 女は、横向きに身体を丸め込むように小さく寝ていた。その寝顔に月明かりが差し込む。  「綺麗だ。」ただ、ため息をつくように言葉が漏れた。 黒く長い髪をゆっくり慎重に動かして、唇にそっとくちづけをして、左の薬指に指輪をはめた。『世界の終わりを待ち、生涯君を愛する。』と指輪の内側には刻まれていた。
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