3人が本棚に入れています
本棚に追加
「秘めたる思い」
ティールはそっと、鍵がかかった扉を開ける。母上が死んだ時、古ぼけた小さな鍵を、宝石箱から持ち出した。
城中の扉に鍵を差し込んで見たが、合うものがなく、『行ってはならない』と言われていた古い塔の上の扉にそれはピタリとはまった。
今日もまた、この古ぼけた鍵が重い扉を開けてくれる。扉の向こうには愛するものがいる。
ティールはしばし立ち止まり、寝ていることを確かめて、ベッドの淵にこしかけた。
女は、横向きに身体を丸め込むように小さく寝ていた。その寝顔に月明かりが差し込む。
「綺麗だ。」ただ、ため息をつくように言葉が漏れた。
黒く長い髪をゆっくり慎重に動かして、唇にそっとくちづけをして、左の薬指に指輪をはめた。『世界の終わりを待ち、生涯君を愛する。』と指輪の内側には刻まれていた。
最初のコメントを投稿しよう!