礼拝

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礼拝

 ケセドはソエルを起し、ライ麦のパンと、スープを食べた。ソエルは無邪気にパンをスープに浸しながら、口に運んでいたが、ケセドの食は一向に進まなかった。  「ケセド爺さんどうしたの?全然食べてないじゃない?」  「ソエルが来る前に少し食べたから、あまり食が進まないのじゃよ。」  「ならいいんだけれど。食べないと健康に悪いからね!」  ケセドは食事を早々と切り上げ、礼拝に向けての準備を行った。空はとても澄んで気持ちが良かったが、そんなことはケセドの心を慰める要因にはならかったし、逆に憂鬱にさせたようだった。  9時半にはまばらに、10時5分前にはほとんどの人が礼拝所に集まっていた。 10時きっかりに、礼拝所の鐘が鳴り響いた。その鐘の音と共にケセドは静かに祭壇の前に立った。  「皆さんよくお集まりになりました。今日は深刻な話をしなければなりません。多少驚かれる方もおられると思いますが、気を強く持って聞いて下さい。」と厳かに言った。  「最近の気候について、農作物の出来については皆さんも心を痛めておられるかと、存知あげます。夏の盛りにコートが必要になるぐらい寒く、小麦の芽は膨らまず、今年の冬は餓死するものも出るのではないかと、危惧をしております。こうゆう時こそ、節制に勤め、お互いが愛し合い、この悪しき事態を乗り越えていかねばならないのです。これは、我々に神が与えた試練なのです。 ここで神のお言葉について書かれた文に触れたいと思います。 『アテルケル23章』長き冬の終わりの春 長き冬が永遠に続き 夏のかけらも見つからない 太陽は隠れて 月すら出てくることもなし 人や馬は飢えて死に 草木も芽を出すことはなし 人は神に祈り そして神を見ゆ ダテテエフェエが終わる時 長き冬の終わりの春がやってくる  皆さん、神を信じて清く正しく生きて下さい。今日の礼拝はこれで終わりとします。」  閉演の合図の鐘が鳴っても、人々はなかなか動こうともしなかった。かたまっておびえている人たちに、ケセドは一人一人声をかける。「大丈夫です。神を信じて待てばよいことなのです。どうか気を強く持って下さい。」その声に諭されて人は帰り支度をする。      しかし、とうのケセドが一番沈み込んでいるのは誰の目から見ても明らかだった。  「どうか神よ、我々を見捨てる事が無き様に。」と心の中で祈った。
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