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楼に雄牛が流れ着く日
炎のルベウス。
火の属性を持つ、限りない欲望を表す文様。
火というのはこの世界で一番神に近いものだと伝えられてきた。
その火を持ってさえも、限りなく自己の欲望を満たそうとする。
この呪われた氷と霧に覆われたニフルヘイムにおいては、経験を積んでも炎のイメージがつかめない。
全てを焼き尽くす炎があるのだろうか?
そっと、指輪に視線を落としながら考えた。
ルベウス
この文様は私の心
焼き尽くされるのはきっと私自身だと思った。
ティールとその一行がニフルヘイムを出てからも、私の生活にはなんら変わりは無かった。毎日、ハトが来るたびに占い、後は本を読むかぼんやり窓の外を見るだけの生活が続いている。
ある朝、私は一日の始めにいつもの通りこの国と世界について占うことにした。「今日も平穏な一日であるように」との願いを込めて。
私の頭に思いついた言葉は、『楼に雄牛が流れ着く日』というなんとも不思議なものだった。私はその言葉の意図する事がわからずにいた。
そして、空の澄んだ青さを見て、今日もいい一日になると思った。
それぐらい美しい雲一つない空だった。
遠くに雲海が見える程、霧が晴れ渡っていた。
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