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書簡
ケセドは白いハトが礼拝所の屋根に止まっているのを見た。
ハトは口に何かの紙をくわえていた。ケセドは慎重にハトの側にかけよりハトが持っている紙を開くと、そこに書いてある文字を読んだ。
「世界は炎上し、陸地は全て沈むでしょう。でも、心配はいりません。あなたと私は共には行けない。あなたは空へ旅立ち、いずれ私の事など忘れてしまう事でしょう。祈っていますあなたの為に。炎で焼けるのは世界ではなく私です。海に沈むのは陸地ではなく私の心です。」とそこには書いてあった。
ケセドは、これは誰かが誰かに宛てた恋文ではないかと思い、今度はハトの足にその手紙を結びつけた。
そして叶わぬ恋のお相手に最後の手紙すら届ける事が出来なかった乙女の事を思った。
幸せは、はかないから美しい。
しかし、その言葉を伝えたとしてもこの少女の胸には何も届かないだろう。
可愛そうな乙女の為に祈る。
「ハーマル・ヘルガ・テッタ・オク・ハルド・フェオーダ!」
この地に眠る聖霊の力を借りて、浄化する。
乙女が生ける屍クリフォトになる事のないように、大地が乙女の傷を優しく癒すように願う。
『世界の終わり』
少女の見たヴィジョンは、わしが交霊をして見たものと同じじゃった。
聖霊たちが言う、終わりは少女の言う炎の終わり。
神がわしらを見捨てる日が近いと、ケセドは感じた。
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