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友達の新居を訪ねて驚いた。
県外の大学に進学し、そのままそちらで就職、結婚、子供も生まれた。
そんな友達が十数年ぶりに、仕事の都合で地元に帰って来ることになった。
知らせを受け、引っ越しのゴタゴタが落ち着いたら会おうと約束をして、やっと迎えた今日という日。
奥さんと、一歳になる息子君を紹介されたのだが、その息子君が、どう見ても人間の姿をしていなかった。
サイズは確かに人間の赤ん坊くらいだが、赤ん坊どころか、この世に存在する動物とはかけ離れた姿をしている。
なのに友達夫婦はひたすらニコニコしていて、あろうことか、息子君を抱っこしてってくれと俺に言うんだ。
「だっこ。だっこ」
友達に抱きかかえられた得体の知れない生物が、俺に、手と触手の合いのこみたいな物体を差し出してくる。
「だっこ。だーっこ」
言葉は日本語だが、声質が絶対に赤ん坊じゃないその訴え。
ただニコニコしているばかりの友達夫婦の機嫌を損ねることなく、とうに過去の要求を突っぱねることができないか、目下必死に考え中!
だっこ…完
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