その色彩は破滅を招くのか

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 鬱陶しい奴のことを思い出したらむしゃくしゃしてきた。アレが男だったらとっくに掴みかかっていたところだ。顔がよくなかったら怒鳴りつけていた。いや、今度難癖つけられたらマジでキレる。あいつがビビるくらい怒鳴りつけて――  そこで俺は足を止めた。いや、足が止まった。異様な光景を目にしたからだ。  人が倒れていた。髪の長い女が、うつ伏せに倒れている。暗くても、体から黒い液体が染み出しているのがいやでも目に入った。  そんで、次に女のそばに突っ立っている男が目についた。人が血を流して倒れているのに、男は棒立ちのまま、そこに立っていた。その手には刃物が握られていて、そんで、俺のことをジッと――おいマジかよ!?  やっと状況を理解した俺は、すぐさま背を向けて走り出した。だけど後ろから男の足音も聞こえてくる。おいおい、マジでヤベえじゃねえか!   通り魔、殺人鬼、ストーカー。男を表すであろう言葉が頭のなかに次々浮かぶが、そのどれだろうと状況に変わりはない。暗がりじゃあ来た道を引き返すのもやっとで、俺は必死に走った。
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