その色彩は破滅を招くのか

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「うああ!」  声を上げながら、男が山口に突っ込んだ。動けずにいる俺の前で山口の体が曲がって――曲がって――男の体が弾け飛んだ。 「……は?」  弾き飛ばされた男の体が、マンションのフェンスに叩きつけられた。そのままコンクリートの地面に落ち、男の動きが止まる。 「は?」  わけがわからないまま山口を見る。男の手から落ちたらしい包丁が、足下に転がっている。 「あの人、だれ?」 「はあ!?」  なに言ってんだこいつ。ほんと、なに言ってんだこいつ!? 「いきなり包丁で刺してくるなんて。いったいなにやったの、高橋君」 「……お前、なに言って」  ドアの開く音が聞こえ始めた。男がフェンスに叩きつけられた音が、マンション住人の耳にも入ったのだろう。このままじゃマズいと、俺は山口の手を掴んだ。 「え、ちょっと、あの人放っておいたら――」 「いいから来い! ほんと、なんなんだよお前!」  声を裏返させながら、山口を引っ張ってその場から逃げ出した。背後から人の声が聞こえてくる。悲鳴も聞こえたから、女も見つかったんだろう。
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