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明滅する。青が明滅して、赤になる。俺よりちょっと早く信号に辿り着いた自転車が、勝ち誇るように横断歩道を渡っていった。
「チッ」
リビングで流れていた星占いを思い出す。ギリギリ目に入ってしまった画面には、最下位の俺の星座と、今日のラッキーアイテムとやらが映っていた。どんな一日になるかは聞き損ねたけど、ラッキーアイテムは文字で覚えている。紫色の手袋だ。んなもん、パッと用意できるわけがねえ。赤い絵の具でも塗れってか。
遅刻したらそれこそがアンラッキーだと、白線に足を乗せる。そのまま白い線を歩いていたら、後ろからとてつもない大声が聞こえてきた。
「ちょっと信号! 信号、赤でしょうがっ!」
「げ」
振り返ると、同級生の山口がバタバタと走ってくるところだった。勢いよく迫ってきたが、信号の手前で立ち止まり、ムググと唇を引き結ぶ。そして、渡り終えた俺に人差し指を向けた。手袋の色は茶色。
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