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「だめだよ、信号赤なのに渡っちゃ!」
「いいだろ、車来てねえんだから。遅刻しそうなんだよ」
それだけ言ってズカズカと歩く。間を置いてまた後ろからバタバタとした足音が迫ってきて、俺はうんざりした。
「だから! 赤信号は渡っちゃだめなんだって!」
「だからは俺のほうだよ。遅刻しそうだったっつってんだろ」
歩く速さを上げるが、山口は食い下がる。
「理由は手段を正当化しません-! そういう油断が命取りになるんだから! それに、もしそれで車が高橋君を轢いたら、運転手が悪いことになっちゃうんだよ! なんの罪もない運転手に悪いと思わないの!?」
「だから、車なんかなかっただろうが! お前、透明の車が走ってる設定で話してんのか!?」
「ああもう、ああいえばこう! 高校生にもなって!」
山口だって、小学生女子みたいな絡み方だ。ぷんすかみたいな擬音がつきそうな怒り方を高校生でやってる恥ずかしさを自覚してほしい。ってか、こいつに構ってたらマジで遅刻する。
「わかったわかった、謝るごめん。だからもういいだろ。マジで遅刻るって」
「反省してないのまるわかりなのは置いといて。そんなに遅刻気にするなら、もっと早く家出ればいいのに」
「は?」
こいつ、遅刻しそうな俺と一緒に歩いてるくせになに言ってんだ? そんな俺の眼差しに気付かないまま、山口はさらに続けた。
「てかさ、遅刻しそうとかそんなの周りは知らないし。言い訳全部遅刻しそうだからで済ませようとするの、ダサくない?」
「はあ!?」
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