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信号無視したおかげか、山口を突き放したおかげか、わりと余裕で学校に着いた。いや、あいつのおかげにすんのはシャクだから、信号無視したおかげにしておくか。無視しなかった山口もセーフだったけど。
「おっす直哉」
「おう」
「見てたぜ。また山口サンに絡まれてたろ」
陽太に肩を組んで笑われ、俺は大きく体をのけぞらせた。
「あいつまじでうぜーわ。だれもいねー赤信号渡ったらすごい勢いで走ってきてさ」
「うわあやりそう」
「でさ、信号赤だからって渡らねーで怒鳴んの。ヤバくね?」
「ヤベーね」
俺たちはあいつとクラスが違うけど、同じクラスのやつは災難だ。ルール違反を見つけるとだれかれかまわず噛みつく、番犬みたいな女である。
「まあでも、なにもしてなきゃなにもしないし、普通に顔かわいいからよくない?」
「よくはねえだろ」
そう、山口はおとなしくさえしていればかわいい部類の顔をしている。だが、いつも眉をつり上げて文句ばかり言う女に魅力はあるだろうか。いや、ない。
「そりゃお前が悪いことばっかしてるからだろ。端から見てると普通にかわいいって。
まあ俺も捕まったときはマジ勘弁ってなったけど」
「おっ、なにやった?」
「ペットボトル、教室のゴミ箱に捨てたところ見られた。ちょうどクラス来ててさ」
「うぇーい、さいなーん」
「いぇーい」
グッと拳を合わせる。
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