その色彩は破滅を招くのか

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 校則を破っただけで不良扱いされてはたまらない。でも、山口はやれやれといった様子でため息をついた。 「だから、何度も言ってるけど――」 「いやならもう言うなよ」 「何度でも言うけれど!」  またお得意の怒り顔で山口が怒る。 「高橋君はもっと自分を客観視したほうがいいと思う! 通りすがりの人は、座りこんでる人が不良かどうかなんてわからないんだから! 学校の評判にも――」 「あー、なんかあるな、そういうの。シュレティンガーの猫」 「シュレーディンガーの猫ね。確認するまでわからないってやつ。でもあれは量子力学の不完全さを提唱するもので――」  話題を逸らすことに成功したので、そのまま無視して先輩たちの元に戻る。山口でシラケたのか、先輩はみんな立ち上がっていた。 「じゃ、あとで俺んち集合な。二年生は適当に菓子とか持ってきて」 「うっす」 「俺、コレ持ってきますよ。親がカートンで買ってたんで」  純一が二本指を曲げると、先輩がにやりと笑った。 「でかした」 「ちゃんと着替えてから来いよ」  目配せをしあって解散する。諦めて帰ったのか、山口の姿は見えなくなっていた。
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