チョコの代償

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「お腹が空いたな。何か食べる物ない?ほら君、バレンタインの時に手作りのチョコをくれただろ?また作ってほしいな。……駄目?」 彼が上目遣いで甘えるように聞いてきた。  今年のバレンタインの前日に、彼の為にとびきり可愛い手作りチョコを作った。 本物のさくらんぼにチョコレートをコーティングしたやつじゃなくて、さくらんぼの形を模したチョコレート。 湯煎(ゆせん)したチョコを、半球のくぼみが並んだシリコンの型に1つずつ流し込み、ゆっくりと回すようにして広げる。 そうすると内側が空洞の半球が出来る。 固まったら型から取り出し、茎にあたる部分を半球同士の間に差し込んでくっ付ける。 取り出す時に半球が割れたり、茎の部分がズレて変な方向で固まったり、膨大な失敗作も産み出した。 約100個の完成品の中から綺麗に出来たチョコを5つだけラッピングして、彼の通う大学の正門前で待っていたっけ。 あの日は気温が低かったし、手袋も忘れちゃったからすごく寒かったな。 講義を終えて帰宅しようとしていた彼は、連絡をしないで待っていた私の姿を見つけてとても驚いていた。 「俺の為に寒い中をずっと待っててくれたとか、感動しちゃってさ。ほら、俺って女の子にモテるタイプじゃないから」 申し訳なさそうな彼の表情を見つめながら私はにこりと微笑み返す。
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