~後編~

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~後編~

遼はぼんやりとした表情で目の前の食事を口に運ぶ。 その目の下にはクマができていた。 大河と出会ってから一週間が経つ。あの日から気を抜くと、彼の声や優しい視線、頭を撫でる温かい掌の感触を、思い出してしまうようになっていた。 特に寝る時が一番あの時の感覚が蘇って、欲しくて欲しくて堪らなくなる。前よりひどくなった渇きに堪えながら、必死で大河の感覚を振り払っている内に夜が明けてしまい、遼はすっかり寝不足になっていた。 自分から逃げ出したくせに、今すぐ大河に会いたくて、撫でて欲しくて、そんな自分の気持ちに遼は戸惑い続けていた。 (違う! 俺は撫でられたくなんかない......!) そう思ってずっと抵抗し続けていたが、日に日に眠れない時間が長くなって、みるみるうちに体調は最悪の状態になっていった。 今までは知らなかったから、気のせいだとやり過ごせてこれたけれど、大河を、domを目の前にして自分がsubだということを嫌というほど思い知った。 (知りたくなかったのに......) こんなの知りたくなかった。心の奥のどうしようもない渇きの潤し方を知ってしまったら、もう気付かないふりも我慢もできない。 遼はギュッと手を握りしめた。 自分の周りにdomは他にもいる。同級生の中には自分がdomだと声高に自慢している奴もいる。 subの本能はdomを求める。dom相手ならきっと誰でも遼のこの渇きを埋めてくれるだろう。だったらdomなら誰でもいいはずだ。 「遼......お前顔色悪すぎ」 目の前に座っている佐々木の声に、思考に沈んでいた遼はハッとして顔を上げた。 「大丈......」 「それもう大丈夫じゃないだろ」 反射的にそう返した遼に、佐々木が表情を厳しくする。遼の顔色があまりに悪くて、佐々木は眉を寄せた。 「どうした...?何かあったのか?」 佐々木の眉間の皺と心配そうな表情に、自分はそんなにひどい顔をしているのか...とどこか他人事のように遼は思う。 普段、遼から話し出さないかぎり余計な詮索をしてこない佐々木が、こんなにはっきりとどうしたのかと聞いてくるのは初めてだった。佐々木がとても心配そうな顔で遼を見つめている。 (そういえば...佐々木もdomだったよな......) 自分がdomだとひけらかすこともなく、だからと言って隠すわけでもない。高圧的な雰囲気も微塵もなく、思いやりがあってとても優しい。大学からの付き合いだが、遼は佐々木のことをとても信頼していた。 きっと佐々木なら遼の話を親身に聞いて、助けてくれるだろう。 こういう人が理想のdomなのかもしれない 遼の頭の中にそんな考えがふっと過ぎる。 だけど。 (いやだ......彼でないと......) 遼の本能がそう告げる。自分でも分からないけれど、この渇きを埋められるのは彼だけだと強く心が叫んでいた。 「大、丈夫......」 「遼......」 どれだけ佐々木に心配されても、遼にはもうそう答えるしかできない。 心配そうな佐々木の視線がいたたまれなくて、遼は下を向いた。 この一週間、何度も大河の存在を近くに感じる時があった。何故か分からないが、彼が近くにくると遼は大河のフェロモンが分かるようになっていた。そして大河の存在を感じるたび、遼はその場から逃げた。それでも何度も何度も大河が近くに来ているのを感じて。大河が遼を探してくれているのだと遼には分かった。そんなの気のせいかもしれないのに、何故か遼には大河が自分を探しているという確信があった。 それを心が嬉しいと喜ぶ。 けれど、今まで自分がsubだということを拒み続け、みんなに隠して、誰にも頼らず弱みを見せず強くあろうと気を張って生きてきたのに、簡単にそれを捨てることなんてできない。 (自分から神崎のところに支配されにいくなんて......そんなの......) なけなしのsubという性への抵抗だけが、弱り切った遼を支えていた。 その時、にわかに食堂の入口が色めきたった。女子の黄色い声が聞こえて、食堂内の視線がそこに一気に集まる。 それと同時に遼の胸がトクントクンと音を刻みだした。 (しまった......食堂が広くて気づけなかった......) ドキドキと高鳴る鼓動と、抑えきれない欲求が湧き上がって、そこに誰がいるのか見なくても遼には分かった。 逃げないと そう思うのに。 遼の心が本能が、彼に早く会いたい、彼の元に早く行きたいと叫び出す。 「珍し......神崎だ。こっちの校舎にはあんまり来ないのにな」 佐々木が入口の方に視線を向けて彼の名前を呼ぶ。 「さすが大学一のイケメン、やっぱいつも見ても驚くぐらい男前だな」 すげぇ人気、と佐々木が思わずというように感嘆の言葉を零す。 振り向いたら駄目だと思うのに、我慢することができず遼は大河の方に顔を向けた。 そこにはやっぱり大河がいて。 モデルのようなスタイルのいい体に白衣を羽織り、中に黒のタートルネックを大河は着ていた。その服装が息を飲むほどに整った大河の美貌をさらに引き立たせていて、その場にいるすべての人間の視線を一心に集めていた。 まるでそこだけ空気が違うのかと思うほど大河の姿は輝いていて、大河に焦がれている遼じゃなくても、誰もが見惚れてしまう、それぐらい彼の姿は美しかった。 「っ......」 その姿が視線の中に写るだけで、何かが溢れそうになって遼は胸を抑える。 大河はなにかの気配を辿るように視線を彷徨わせて、そしてすぐに遼の方に視線を向けた。 「青木......‼」 名前を呼んで、向けられる生徒たちの視線になど見向きもせず大河は真っ直ぐに遼の方に歩いてくる。 最初は人の波を避けてゆっくりと、だけど次第にその歩調が足早になって、最後には我慢ができないというように遼の方に駆け出した。 (ああ......) 彼の綺麗な顔が心配そうに遼だけを見ている。遼以外など目に入らないというように遼だけを見つめている。 それがこんなに嬉しいなんて。 (もうダメだ......) 遼は立ち上がると駆けてくる大河の方に手を伸ばした。その手を大河が取って。 大河が遼を抱きしめるのと同時に、遼は大河の胸の中に自分から飛び込んでいった。 「やっと見つけた」 強くその腕が遼を抱きしめてくれる。 「遅くなってごめんね」 温かい大河の体温に自分の体から力が抜けるのが分かった。優しい声が耳元で聞こえて、安心感で瞳が潤む。 「青木」 大河の何もかもが気持ちよくて堪らない。ふわふわとした浮遊感に包まれて、そしてあらぬ部分に一気に熱が集まるのを感じた。 「あ......かんざきぃ......」 知らず甘えた声が出る。助けを求めるように遼は大河の胸元に隠れるように胸を埋めた。 「.........」 遼の様子を大河が伺う。遼の赤くなった頬と、熱い息に気付いて大河はギュッと遼をその胸に抱きしめた。 「大丈夫だよ」 そう言って優しく笑うと、大河が体を離す。 「あ......」 不安そうな遼の声に、大河が耳元に口を近づける。 「-stay-(動くな)」 「っ~~」 周りに聞こえないように囁かれた言葉に、ビリビリと背筋に震えるような快感が走って遼は一瞬で動けなくなる。 「もう少しだけ、我慢だよ」 大河は白衣を脱ぐと、遼の体を包む。そして遼を抱きあげた。 「ちょっ......!」 いきなりのことに遼は慌てる。 「青木」 だけど名前を呼ばれて、それだけで遼は大人しく抱きあげる大河の腕の中に収まった。 「青木が体調悪いみたいだから連れてくね」 「え? あ、ああ......」 いきなりのことに面食らう佐々木に、にっこりと笑顔を向けると大河は歩き出す。 「神崎!」 そんな大河の背中を、佐々木の呼ぶ声が引き止める。 「......お前、遼に何するつもりだ」 佐々木がキッ大河を睨む。その姿からは遼のことを心配していることが容易に伝わってきた。 佐々木の視線をまっすぐに受けて、大河が真摯な瞳を佐々木に向ける。 「青木の嫌がることはしない。約束するよ」 佐々木にそう言うと、大河が腕の中の遼に微笑みかける。それに胸が高鳴った遼は、無意識で赤くなった頬を隠すように大河の胸に顔を埋めた。 そんな二人の様子に佐々木は瞳を瞬かせる。 まかせてと言うように佐々木に向かって頷くと、大河は遼を連れてその場を去っていった。 お姫様抱っこで遼を連れていく王子様のような大河の姿に、その場にいる女子だけじゃなく男子までがきゃあきゃあと黄色い声を上げる。 消えていく二人の姿を見つめながら、佐々木はふうと息を吐いた。 「なんか......知らないうちにおもしろいことになってんな......」 心配そうな顔をしながらも、大河の真摯な瞳と大河に対する遼の様子に、大丈夫そうだなと佐々木はホッと息を吐いた。 中庭を抜けた先にある、理学部の研究室棟に大河は遼を連れて行く。 その中の研究室の一つに入ると大河は遼を下ろした。 「ここは......」 「俺の研究室だから安心して」 「神崎の......?」 驚きの声を出す遼に大河が頷く。 (ただの学生に研究室って......) 普通は生徒が個人で研究室なんか持てない。いったい大河は何者なのだろうか。 大河は部屋の奥にあるデスクの椅子に腰を下ろすと、遼に向かって腕を広げた。 「ほら、おいで」 「っ、......」 そう言って大河が微笑みかける。囁く声が直接脳の中に響いて、言われるままに自分から大河の方に歩いて行った。 遼が腕の中に身を寄せると、大河がギュッと抱きしめる。 「ん......いい子だね。かわいい」 「あっ.....」 抱きしめる手が優しく遼の背中を撫でた。撫でられる体温と甘い声に全身が溶けていく。遼は体が震えるのを我慢するように口を押えた。 (こんな感覚始めてだ......) 甘くて、優しくて、幸せで、嬉しい。胸が高鳴りすぎて苦しいのに、心地よくて堪らない。 あまりの気持ちよさに助けを求めるよう無意識で大河を見つめると、大河は遼の背中を撫でて大丈夫だというように微笑んだ。 その微笑みがあまりにも愛しさに溢れていて、遼の中にある戸惑いや困惑、そして抵抗をあっという間に包みこんでしまう。 大河がそっと遼の頬に触れた。 「こんなになるまで我慢して......」 そう言って大河が遼の目の下のクマをなぞる。優しい指先に、勝手に遼の瞳が潤んでいく。 「もう我慢しなくていいよ」 「っ......」 その言葉に、遼の瞳から一滴涙が零れ落ちた。 「なんでっ俺にここまでしてくれるんだよ」 大河が探してくれているのに気付いていたのに、遼は逃げ続けた。きっと遼が分かっていたように、大河も遼が逃げていることに気付いていたはずだ。 (なのに......神崎はあきらめずに俺を迎えに来てくれた......) どんなに行きたくても自分から大河の元に行くことが遼にはできなくて。きっと大河が来てくれなかったら、遼は体調不良で倒れていたかもしれない。 ポロポロと零れる涙を、大河がとても綺麗なものを見るような瞳で見つめる。まっすぐにジッと大河は遼の瞳を覗き込んだ。 「見たいから」 「え?」 「青木の笑顔をまた見たいから」 「えがお......」 不思議そうな遼に、大河はうんと頷いた。 「あの日......初めて青木と会った日」 大河はそっと遼の両手を手に取ると握りしめた。 「一時間も空を見てて気付いたら寝てたなんて、バカにされても仕方ないのに......青木は笑ってくれた」 思い出しているのか大河が嬉しそうに笑う。 「あれがどれだけ嬉しかったか」 はにかむように笑って、綻んだ瞳が遼を見つめる。 「だから今度は俺が青木を喜ばせたいんだ......ダメ?」 甘えるように求めるように請われる。そこにはdomの命令なんてどこにもなくて、ただ遼を思う気持ちだけがあった。 「そ、んなの勝手にしたらいいだろ、お前だったら俺のことなんかっ」 大河の気持ちに胸がときめく。ときめく遼の心と、subとしての本能が重なって、心臓が苦しい程に音を立てる。 さっきから手が震えて、もう意識が半分大河に持って行かれている。 早くと心が急かす。 だけど簡単には素直になれなくて、遼は最後の気力を振り絞る。 「勝手にし......」 「青木の望まないことはしたくない」 遼の言葉を遮るように、大河がギュッと手を握った。 「俺は青木を幸せにしたい」 熱く見つめる大河の視線に晒される。 「守りたい」 何もかもがとろとろに溶けて、体中が熱くなる。 「愛してもいい...?」 「っ―――」 優しい声で大河がそう告げる。 遼を見つめる真摯な大河の瞳。その瞳は遼への慈しみと愛情に満ちていて、そして遼を支配したいという圧倒的なdomの本能が溢れていた。 その瞳に遼は何も考えられなくなる。 (愛されたい...) 遼は握られた手をギュッと掴み返した。 (神崎に......) 目の前のこの男に支配されたい、それだけが遼の中を埋めつくす。 遼はゆっくりと口を開いた。 「あい、して......めちゃめちゃにして......かんざきっ!」 うるうると瞳を滲ませ、欲しいと遼が大河を求める。 遼のその言葉に大河の口角が上がった。 「ちゃんと言えて偉いね......いい子(-good boy-)」 「あ、んっ......」 一瞬で芯が溶けるような、甘い悦びが体と心に広がって、ガクガクと足が震え出す。 「あ.....かんざき......」 とてつもない快感に怖くなって大河の名前を呼ぶと、安心させるように遼を見つめながら大河がうんと頷いてくれる。 「大河、だよ」 「え...」 「名前で呼んで、りょう」 「んーっ......!」 名前を呼ばれただけなのに、痺れるような気持ちよさが爪先から頭まで駆け上がって、遼は手を口に当てて堪えた。 下半身に熱が集まる。大河の視線と言葉だけで、どうしようもないどうにもできない快感が、次から次に溢れてきて止まらない。 「たいが......」 フルフルと震えながら名前を呼んだ遼に大河は微笑むと、遼を見つめながら満足そうに息を吐いた。 「ありがとう。えらいね」 「う、ん......」 褒められる言葉に、きゅうっと胸が喜びで締め付けられる。 「ねえ、遼。なんで立ってるの?」 「え......」 大河の雰囲気が変わる。 優しさを纏ったままなのに、一気にその瞳に妖艶さと欲望が広がっていった。 ともすれば高圧的な、絶対的なdomの、支配欲を隠さなくなった瞳と雰囲気に、縫い止められたように動けない。 「おすわり」 「ひぁ...!」 それは一瞬だった。 考える間もなく、気づいたらその場に遼は座りこんでいた。 ペタンと目の前に崩れ落ちるように座った遼に大河が熱い息を零す。 「ふふ、かわいい」 そう言って大河が遼の頭を撫でる。 「ん......」 大河にされる何もかもが気持ちよくてとろんと遼の瞳が蕩けた。そのまま大河の手が頬を包み込む。 あまりの気持ちよさに遼は自分からその手に頬を寄せると、目の前にある大河の足に抱きついてその膝の上に頭を預けた。 もっと撫でてというような、甘えた仕草に大河が目を細める。 「コマンド気持ちよかった?」 「うん」 「もっと欲しい?」 「うん」 大河の言葉に遼が素直に頷く。 「じゃあ...これからは俺が、俺だけが遼のこと愛して可愛いがってあげるね」 聞こえる声に遼のすべてが喜ぶ。 大河にこれからも愛してもらえるのだと思うだけで、とろとろに思考が蕩けて幸福感が心を満たしていく。 「俺に全部預けて、遼の全て隠さずに俺に全部ちょうだい」 「うん!」 体が喜びに満たされ、大河が話すたびにポカポカと心が温かくなって幸せで瞳が潤む。 (これが subの喜び......こんなの教えられたらもう......) 「だからほら、その可愛いところ見せて?」 「え......」 大河の視線が遼の下半身を見つめる。ズボンの上からでも分かるほど、遼のそこは大きく反応していた。 言われるままおずおずと遼はベルトを解き前をくつろげる。 するとすっかり立ち上がった遼のそこがプルンと顔を覗かせた。 「素直だね...可愛い」 「あ...大河......」 「ふふ、どうしたいの?」 遼は逡巡して、でも口を開いた。 「イキたい......」 素直な遼に、大河が熱い息を吐いて微笑んだ。 「ん、いいよ......俺も一緒に、いい?」 「え......?」 そう言うと大河が遼の手を取って、自分の下半身に当てる。大河のそこはすっかり固くなっていた。驚いて遼が大河を見上げる。 「遼が気持ちいいと俺も気持ちいいんだよ」 「あ......たいがもきもちい...の......」 「そうだよ」 (俺だけじゃないんだ......) その事実が嬉しくて胸がキュンとする。自分だけじゃなく大河も気持ちいいのだと知って胸が高鳴った。 「ほら、一緒にしよう」 大河は遼を起こすと、膝の上に向かい合うように遼を乗せる。そしてデニムの前を開けると、固くなった自身を取り出した。 「ん......」 反り返るほどに立ち上がった大河の大きなそれに、遼の口からもの欲しそうな吐息が漏れる。 遼のペニスにチュッとキスをするように自身を触れさせると、大河はそのまま両手で自分と遼のモノを握り込んだ。 「っあ......!」 強い刺激に遼はギュッと大河の服を掴む。 外側を掌で撫で上げられて、裏筋を大河の固いモノでなぞられる。直接的な快感に、遼は一気に限界まで昇りつめていった。 「たいがっ...ん、あぁ......」 「きもちいい?教えて」 その上、言葉でも責められて、この快感をどうやって逃せばいいのか遼には分からない。 「きもちいい......! きもちいいからぁ......たいがぁ......」 もう限界が来ている、遼は額を大河の肩に押し付け、甘えるようにそれを訴える。 「ふっ...かわいいね......りょう。もう少しだけ我慢だよ......一緒にイこうね」 「あ......そんな......」 限界なのに、我慢してと言われて遼は瞳をますます潤ませる。 だけどそれも快感になって、押し寄せる気持ちよさにただ大河に助けを求めることしかできなくて、遼はその首に抱きついた。 「ん...うぅ......っ......」 その間も絶え間なく包んだ手でペニスを刺激される。遼はお腹に力を入れて、それに堪えた。 「ちゃんと待てできてえらいね......」 「ああん......」 褒められる言葉に、ゾクッと背中に電流が流れて、遼は体を仰け反らせる。 「たいが...たいがぁ...っ!」 「ん......いいよ......」 何度も名前を呼ぶ遼に大河が頷く。 「イって(-Cum-)」 「ひっ...やぁ、あぁ...あ―――っ」 言われた瞬間意識が真っ白になった。そして内側から溢れ出してくる悦びと幸福感に遼は震えながら快感の証を放った。 「ん...ぁ....あっん...はぁ.........」 白濁を放った後も、尾を引くように快感が続いて、遼の口から断続的に嬌声が漏れる。 遼は無意識で大河に強く抱きついた。すぐに優しい手が背中を撫でてくれて、上がった呼吸が落ち着てくる。 「ああ...かわいい......りょう......」 大河が遼を抱きしめる。温かい体温と甘美な甘さに包まれ、ポカポカと心が温かくなる。気持ちよくて温かくて幸せで、もうこの体温から離れられない。 「りょう」 呼ばれた声に顔を上げる。おずおずとした動作で大河を見つめると、すぐに優しく慈しむような瞳で大河が遼を見つめ返してくれる。 その手が頭を撫でる、それだけで心が全身が遼のすべてが、喜びに震えた。 生まれ持った運命(バース) そんなものに人生左右されるなんてくそくらえ 命令されて喜ぶなんて、そんなのおかしい人間の考えだ いつだって俺は自分の意思で生きていく誰かの言葉(コマンド)なんか死んでも聞くものか、 そう思っていたのに 撫でる手のあまりの心地よさに、遼は自分の全てを預けるように大河にもたれかかった。 遼を受け止めて、大河が強く遼を抱きしめる。 大河は遼を抱き上げると、側にあった机の上に遼の体を押し倒した。 「これからは俺が一生可愛がって愛してあげるね。だからほら、遼......」 『Present』 囁かれた命令(愛の言葉)に遼はうっとりと瞳を蕩けさせ、夢見るように頷いた。 支配がこんなに幸せで気持ちいいなんて知らなかった。
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