祈りの食卓

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 乾いた大地には獲物など見当たらなかった。自慢の毛皮はボロボロだ。筋肉ではち切れんばかりだった体も今じゃ骨と皮。ハンター・レッドと恐れられた俺も空腹には勝てなかった。  ここまでかーー。  諦めかけたその時、小岩の陰で何かが動いた。そっと足音を忍ばせ近よった。  ひな鳥だった。やっと食料にありつける! 「ピー……」  見るとひな鳥も骨と皮状態。食うところなんてなかった。 「お腹空いたよぅ……」  ひな鳥は地面に這いつくばりぐったりしていた。 「なんだ、迷子か?」 「お兄ちゃんは誰?」 「俺か? 俺はキツネのレッドだ」 「キツネ?」  こいつ、キツネも知らないのか。自然界で生きていくには致命的だ。まあ親鳥にはぐれて教えてもらわなかったのなら仕方がない。  しかしコイツじゃ腹の足しにはならない。少し太らせないと。 「腹減ったのか。何食べたいんだ?」 「虫」 「虫かぁ……」  見渡す限りの荒野には、虫はいそうになかった。それでも土の中にいるかもしれない。俺はそこら中の地面を掘り返した。  朽ちた木の根本を掘り返すと何かが動いた。そこには潰れかかったイモムシがいた。コイツも腹ペコらしい。 「お前は何を食べるんだ?」 「柔らかい、若葉が食べたい」  周りを見るが若葉どころか葉っぱもない。カラカラに乾ききった木が立ち枯れているだけだった。 「水か……」  俺は水を探した。しかし辺りに川なんてなかった。そういえば森の中に池があったはずだ。俺は森へ向かった。
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