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ぐるるるるるる…
お腹が鳴っている。まだいける。まだ、周りの人に聞こえるほどの大きさではない。
それにしてもお腹がすいた。朝ごはんを食べていないと、昼休みまでお腹が持たない。
ぐぅう…
あ…やばい。結構音が大きくなってきた。お腹の鳴りやすい体質の私は、こういうときの対応を心得ている。下腹部にグッと力を入れるのだ。
ぐぎゅっ
あ…!失敗した。力の入れ方を間違えた。胃のあたりの感覚を意識して、慎重に、ゆっくりと…。
…
よしよし。収まってきた。まだ二時間目の授業。先生が板書をする音だけが響く教室。ここでお腹なんて鳴らしたら大惨事だ。
ぐぅううううぎゅごっ!
私は咄嗟にお腹に当てていた手を離し、カチンと固まった。
「…。」
静まり返る教室。だがその静けさの種類は、さっきまでとは明らかに違った。
「…ふっ!」「くすくすくす…」「ちょ…今のって…」
堪えきれないざわめきが、どんどん広がっていく。あぁもう、最悪だ。
「あー!腹減った!」
私は弾かれたように、声のしたほうを見た。
「やばいわぁ、まじで。」
隣の席の里田くんが、お腹に手を当ててのけぞっている。
「陸、お前かよ!」「腹なりすぎだろ!」
数人の男子が里田くんに野次を飛ばす。
「里田ぁ、前まで聞こえたぞー。授業終わるまでがんばれー。」
先生までもが、笑いながら声をかける。里田くんは「はぁーい」と気の抜けた返事をした。
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