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「なんだよ、コーラを口から出すなよ、松本。汚いな。俺の一世一代の恋を一番に聞かせてやっているのに、ありがたみのうすいやつだなぁ」
口では文句を言いながら、テーブルに備え付けのペーパーナプキンを数枚取って、笑いながら手渡してくる。モテる男はやっぱり気がきく……って、そうじゃなくて!
「……お前が、恋、を、ねえ。そそそ、それで、誰なんだその子は?」
テーブルにこぼれたコーラを、受け取ったペーパーナプキンでふき取りながら聞く。
顔を上げて羽木の顔を見るのが、いや、自分の顔を見られるのが怖い。上目遣いに羽木を盗み見ると、恋の熱に浮かされてうっとりと夢見ている男の顔があった。
「それがわからないんだよ! 転校生なのかなあ? スイカちゃんが手をつないでいたってことは、陸上部なのかな?」
――いや……多分……帰宅部だよ
「肩がぶつかった時、ゴメンねって言ってくれたんだ」
――ぶつかったら謝るだろう、誰でも
「初めて会うのに、そこはかとなく昔から知っていたような懐かしさを感じたんだ」
――そういえば、羽木とは小学校から同じ学校だったっけ……。昔から知っているし、懐かしいよな、そりゃ
「ああっ、あの子は誰なんだろう? 今まで彼女の事を知らなかったなんて、俺はどうかしているよ!」
――……羽木、大丈夫だ、お前はどうもしていない。なぜなら……なぜなら……
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