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「なっ! ちっ、違っ。スイカさんが……! あぐっ 痛ってー」
動揺して舌を噛んでしまった。配慮も遠慮も欠片もないスイカさんにだけは言われたくないよ。
「あー、はいはい。分かってるって。翼、かわいいもんねえ」
スイカさんは訳知り顔で僕の肩をポンポン、と叩いて言った。
――やめてくれ! 翼ちゃんに引かれちゃうじゃないか。それにそもそも怒っている理由が間違いだ
僕はむすっと黙り込んで、スイカさんをにらんだ。
「おーい、松本くん、こっちこっち」
翼ちゃんが隣の席の椅子をポンポン叩く。同じポンポンでもスイカさんの憐みのポンポンとは全然違う。翼ちゃんは本当に天使だ。……いや、ゾンビだけど。僕は翼ちゃんがポンポンしてくれた席に座り、お弁当箱を机の上に置いた。
「事後承諾になっちゃってゴメンね。スイカちゃんには秘密がバレちゃったから、一緒にランチしてもいいかな?」
翼ちゃんが上目づかいで両手を合わせてお願いポーズをする。
「うん」
ノータイムでうなずく。翼ちゃんに頼まれたらお願いを叶える、これはもはや脊髄反射だ。
ゾンビ食しか食べられなくなってしまったからという理由ではあるけれど、スイカさんに指摘されるまでもなく、ランチタイムは僕の秘かな楽しみの時間だった。正直、残念な気もすごくするけど、翼ちゃんは僕とふたりきりよりも、賑やかにランチタイムを過ごした方が楽しいに決まっている。
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