『彼女のランチタイムが大変です』

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「ふーん、そっかぁ……」 翼ちゃんは意味深にうなずき、「じゃあ、ライバルだねっ!」と言って、フォークで指ウィンナーを突き刺すと、それで羽木を指さした。「負けないぞっ」 「は? ライバル? 翼ちゃんと俺が?」羽木はつかんでいた僕のワイシャツを離した。 「翼ちゃんがライバル……? え、どゆこと?」ブツブツひとり言を言いながら、しきりに首をひねっている。 ――羽木と翼ちゃんがライバル……。もしかして、翼ちゃんも『男の娘』の僕を好……ッ?! い、いや、まさか。そんなことあるわけ…… チラッと翼ちゃんをのぞき見ると、指ウィンナーにかぶりつき、モグモグしていた。 「目玉のゆで卵、もらっていい?」常にマイペースのスイカさんが翼ちゃんに聞く。 「それは一個しかないから、ダメー」翼ちゃんがスープジャーを手で守る。「でも明日はママに両目にしてもらうね」 「ははっ」と笑ってしまう。いつもと同じ翼ちゃんだ。そうだよな、いつものドッキリに決まっている。  翼ちゃんが横目でチロリンと僕を見た。唇をちょっと尖らせたその顔は、いつもよりもかわいくて、僕はまた翼ちゃんが好きになる。 ――ドッキリにひっかかっても、スイカさんに殴られても羽木に惚れられちゃっても翼ちゃんがゾンビでも、君が笑っている今日がいい  僕と翼ちゃんの、なんでもない閑日月な日々は、ゆらゆら揺らいで今日も、たぶん明日も続いていく。 了
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