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「じゃあ、街に行くやつと、村に行くやつで分けるか。街は……」
はいっ!と手を上げると「村か」と言われるので「街だ!」と文句を言い、街に詳しいルーカスと奏太、ノアが街。
ニコルとユーリと村に詳しい私兵二人を連れて村。
ディランとサイラスは補給と称して街と街の外の探索と別れる。
「いいか?変なの見たら直ぐに呼べ」
「結月さんと泰我は?」
「血の分析をする。早く出せ」
「泰我、見張っておけよ?容器も粉々にして消してくれ」
「分かりました」
少し採血をしてから明日の朝から開始すると言われ部屋に戻るが、中々眠れずに屋敷を歩いていると、男爵が図書の部屋で本を読んでいた。
「あの……」
「王子、眠れませんかな?」
「ちょっと寝付けなくて。何を読んでるんですか?」
「牛について……」と本を見せてくれる。
しかも、人間界のものと各界のもの。
ただ、顔が全然違って同じ牛でも可愛くない。
「やはり気になりまして」
「この牛がガリガリになっても乳を出すのか……ってありえないですよね」
「確かに。寿命もあり、子が育つまで二年から三年ほど。頭数は多いと思いますが、普通は痩せるとなると病気か感染など疑われます。人の世界でも同じようなことがあるとか」
「うん、あるよ。男爵は物知りなんですね」
「こんな地にいると書物を読むのと、たまに人間界に行くものからの土産話などで退屈を凌いでいます。私も行ったことがあるのです。その時に農業というのを見て、この地ならば出来ないかと四苦八苦して、ルーカス様に頼んで温室というのを作る道具を用意していただいて……」
「ルーカスさんが?」
「ええ。かなり昔で200年は経っていますが。その辺を放浪して居るのなら役に立ってくれと少々……」と。
「弱みがあるとか?」
「いえいえ。昔の話ですが、争いが耐えず、怪我をしたニコル様とルーカス様がここで療養されていたことがありまして。その時に礼をと言われて、いずれ欲しいものができた時にお願いを聞いて欲しいと言ったまで。それを忘れていたので、少々おしりを叩かせていただきました」と笑っている。
「そんな昔からあるんだ」
「そうですね、人の世界とは時間軸も違いますから。王子はその頃は魔界にいたかもしれませんね」
「情報通?」
「ある程度の話は耳に入りますし、王子もまたこちらに来ることがあればお立ち寄りください」
「ありがと。そっとミルクとかあるかな?」
「部屋にお持ちいたしましょう。夜は特に冷えますから」
優しい人だなと部屋に戻ると、直ぐにミルクを持ってきてくれたが、飲もうと匂いを嗅ぐとちょっと牛乳の匂いと何かが違う。
城で飲んだミルクはもっとふわっとした香りだったのに。
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