男爵

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「ですが……」 「いいよ。俺、鼻いいから匂いには敏感だし、今はスフィ達もいるから匂いで分かると思うんだ。このミルクに誰かが毒を入れたんじゃないのなら、わざとじゃないと思うし」 でもでもとノアが文句を言っているので、「まぁ、魔界の夜は長いし見に行くか?」とルーカスの助け舟。 みんなで厨房まで行くと、使用人たちはみんな膝を着いているが、その中にミルクを持ってきてくれた人を見つける。 その事を言うと「そこのお前ちょっとこい」と言うと、悲鳴のような返事をした女性はポロポロと泣き出し、何が起こっているのか全くわかっていない様子。 「何もしない。お前がホットミルクを奏太に持っていったんだな?」 直答を許すと言われ「は、はい。男爵に頼まれ、いつものミルクに、ブランデーを少し入れてお持ちしました」 「そのブランデーはどれですか?」 「この瓶のものです」 ニコルが確認し、蓋を開けて匂いを嗅ぐと「当たりです」という。 「いつもこのブランデーか?」 「いえ、最近いつもの物は高くなったので、この数カ月はこのブランデーを街で買ってます。お酒など重いものは屋敷まで街の人が運んでくれますので、私達はそれを片付けて必要な分だけ棚に置くだけで……」 「ミルクは?」 「それは二日に一度配達で買います。ミルクスープをお出しすることも多いですし、朝食にもお出ししますから」 「その樽見せてください」 案内をしてもらって見ると、使用人の分もあるのか、樽が五つ。 使ったのはまだ明けて間もない樽。 「こっちの開いているのは?」 「残り少ないので明日使用人ように。王子様方はお客様ですので新しい樽を開けました」 ユーリが確認すると、やはり棒の色が変わっていて、ほかの樽も確認するが、残りの樽は色が変わらない。 「この樽だけ持っていく。ほかのは使って構わんが、最近変わった飲み物や食べ物、仕入先、全て書出して直ぐに出せ」 「か、かしこまりました!」 ユーリの弦で運ぶので楽なのだが、持っていったのは結月の部屋。
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