男爵

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「何やら……オリーよ、そなたも臭うか?」 「もちろん。ただ腐ったような臭いと、普通の匂いと混じっていて……小屋の右は臭い、左は静かだし普通の匂いとだけ」 「じゃあまずは普通の左に行くか」 小屋に近づくと牛たちは寝ていて、人間界と模様も形も違うが、まだ仔牛なのが数頭と普通の親であろう牛が分けられていて、ちゃんと清潔にしてあり、こちらに気づいてはいるがかなり大人しい。 「スフィ、話せる?」 「話すと言っても相手は牛。魔物でも話せるものと話せぬものがいるのは知っておるであろう?」 「分かってるけど、鳴き声とかでもわかんない?」 やってみようと何頭かの牛に近付き、時折唸り声にしか聞こえなかったが、スフィは「小屋、助けて、危ない」としか分からなかったという。
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