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「いくつか尋ねたいことがあります」とニコルが声をかけると、「分かることなら」ともう床に頭が埋まるんじゃないかと言うほどに頭を下げている。
「この村には何人ほど住んでますか?」
「50人ほど。女子供いれても……」
「こんな辺鄙なところに子供も?」
「はい。儂らはここで生まれ育ち、牛を飼って昔から暮らしてます」
「あの牛はいつからですか?」
「さ、最初は半年ほど前に二頭貰ってくれと男が牛を連れてきて。その時は牛の亜種と思って二頭くらいならと引き取りました」
「二頭があんなに増えるのか?」
「知ってること全部話してくれない?」
「はい……その二頭がオスとメスだと分かり、しばらくは普通の牛同様に同じ小屋に入れてました。でも、直ぐに雌牛の腹が出てきて、三日で子が生まれ、そこからどんどん増えて。そしたら男が村長に宝石のようなものが入った袋を渡していて、仔牛が産まれたらすぐ飲ませるようにと。そして、乳は安全だから売れば良いと。それから何人かの男が今牛につ着ている機械というものを持ってきて……勝手に乳が絞れるから便利だと。最初は便利なものもくれるし、毎月金もくれるしと喜んでたんですが……俺たちゃ最近見張りに着いたんですけども、その、乳が出なくなると牛は倒れて死んでしまい、死んだ牛はまとめて置いておくと誰かが回収に来るのか、朝にはなくなってて……王子様、儂らはお咎めがあるのでしょうか」
「外から話は聞いた。今の話も嘘はないだろう。だが、そんな変な牛。なぜ断らなかった?お前たちも気持ち悪がってただろう?」
「お、俺たちゃ村長には逆らえねえんです。その男が来てから村長は変わっちまって」
「変わったとは?」
「村長は村の子達の面倒もみんなが働いてる間みてくれる優しい人でしたが、この数カ月は普通の牛の乳も今までよりもっと絞れと無茶なことを言い出し、後は目が黄色くなっていて……」
「分かりました。とりあえず、あの装置を全部取ってください」
すぐに!と小屋に走っていき、全ての機械を外した後に「奏太、結月を呼べ」と言われ持ってきていた水晶で結月に来て欲しいと頼む。
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