男爵

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「入るぞ!」 一応声はかけて開けてはいるが、さすがにちょっと非常識。 「誰じゃ夜更けに!」 「あー、術だな」 「魔法?」 「しかも定期的に掛けられてるんだろ。見ろ、目が黄色になっているが、瞳孔も開きっぱなしだ」 「俺にそこまでわかんないけど、その魔法解けるの?」 「無理!しかも臭い!」 「香が炊かれてます」と香を消してハンカチに包んでいるので、それも後で調べるのだろう。 頭がぼーっとしているのか、結月が額に手を当てるとコテンと眠ってしまったので、その間にと部屋中の引き出しを開けて漁っているが、「おい、来てみろ」とタンスの奥から出してきたのは木箱。 中を見ると、袋に入った欠片とかなりの現金。 「貯めたなぁ。普通は村で乳を売ったところで、食べていくのには困らん程度だ。このじじい、最低限しか村人に渡してなかったんだろ」 強欲ジジイと言っているが、お金大好き結月が言うと何故か納得できない。 「ノア、村のものを全員起こせ。女子供もだ」 「すぐに」 村の真ん中の椅子に結月が座り、まずは子供から。次に女性、男性とまるで健康診断のように見ていく。 「ユーリ、左に集めたものたちは縛っておけ」 「城に送りますか?」 「一旦な?術にかかってるのか、判断できん。乳のせいならば解毒で何とかなるかもしれん」 「分かりました。魔王様にはなんと?」 「見たらわかるだろ」 また適当なと言いたいが、自分には何も出来ないので黙っておくが、他の住民はやはり幻界の女王ということもあり、そこに全界の王子までいるものだからかなり震え上がっている。
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