男爵

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兵に村人に薬を飲ませて様子を見るようにと指示し、村長のいる牢に入る。 まだボーッとしていたので、ルーカスが瓶に入っている薬を無理やり飲ませ、椅子に座ってしばらく様子を見ていると、頭が痛いとベッドにうずくまってしまう。 「ノア、起き上がらせてくれ」 「はい」 ノアが何とか座らせると、顔色は良くなっているが、頭がかなり痛いらしい。 「ルーカスさん、この丸薬飲ませていい?」 「頭痛薬か?」 「うん。結月さんのだからすぐ効くと思うんだけど」 丸薬もすぐに飲ませると、今度は置いてある水瓶を抱えてガブガブと飲んでいる。 「奏太、何か薬ないか?」 「何飲ませていいか分からないし……」 「仕方ない。おい、名前は言えるか?」と村長の前にルーカスが座る。 「名前……わしゃあ、牛の村の村長じゃが」 「名は?」 「ロックじゃ」 「俺が誰かわかるか?」 じーっと見たあとに、頭を振って「見たことがあるような気はするのじゃが、頭がぼーっとしていて……」 「まぁいい。どこから覚えてる?」 「どこからとは?」 「ロックさん、あなたの村に牛を連れてきた人を覚えていますか?」とノアの助け舟。 「おお、あの牛か。覚えているとも」 「じゃあ、そこから覚えてることぜーーーんぶ話して!」 「話すと言っても……男が牛を貰ってくれと言ってきて、牛が増えるのは構わんから良いと引き取ったんじゃ。すぐに子牛が生まれてから、死んだ牛は村のハズレに置いておくといつの間にか居なくなって。それから髪の長い男が毎週夜に儂の家に来るようになって……報酬と宝石をくれたんじゃ。その宝石は牛に飲ませるといい乳が出ると言われたんで、村のものにも言って飲ませるようにしてじゃな……」
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