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異動して四年。あいつも就職して三年となった。
現在は斉藤と夜勤中で、時刻は二十二時を過ぎ。詰所で待機の時間だった。
今日付けで異動していった同僚のことを話し、自分達もそろそろだろうと話す。
斉藤はどこまで本心か知らないが、私と離れるのが淋しいと言ってくれる。
だから、私は思わず。
「好きだ」
そう呟いてしまった。
「え……?」
本気だった。もう、抑えられなかった。
カチカチカチと詰所にある時計だけが、ただ静かに時を刻んでいく。
「俺も好きです」
しばらく何かを考えているような表情を浮かべた斉藤は、私に笑いかけてきた。
「付き合いましょう、先輩」
私を見つめて笑いかけてくるこいつに、私は。
ピリリリリ。ピリリリリ。
しかし、その音に私の胸の高鳴りは掻き消された。
これは利用者さんからのコール。
「木下さんだ。行ってきます」
「あ、ありがとう」
いつも通り、仕事に戻るあいつ。
え、さっきの話は現実だよな?
これって、付き合っているってことだよな!
どうしよう! いやいや仕事中だろ! しっかりしないと!
この優しい目も、ふわふわな髪も、この大きな手も、全て私のものなんだ。
うわあ。考え、やば!
だけど、そうゆうことなんだよな?
私は熱くなる頬を、ただ感じていた。
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