もしも彼女が

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もしも彼女が

俺の胸ぐらを掴んできた巨漢の一人が、学生なのに酒臭い息で言った。 「ちょいと美術室まで行こうか。ここは人目があるからな」 美術室は今いる場所とは別の棟にある。その間に美梅ちゃんが何をされるか分からない。 もしも彼女が泣いていたら。 もしも彼女が怖い思いをしていたら。 もしも彼女が俺の名前を叫んでいたら。 俺がそばにいなくてどうすんだ。 俺が守ってやらなくてどうすんだ。 悩む暇なんてありはしない。即断実行こそ求められるとき。俺の中に、得体が知れない魔物のような強い勇気が込み上げてきた。
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