すべてを想定内に⋯

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すべてを想定内に⋯

仮に今、俺が横槍を殺せばどうなるか。 間違いなく逮捕され、正当防衛を訴えようと犯罪少年扱いで勾留されるだろう。 もしもその間に、横槍の仲間が彼女に接近しても俺は守り切れない。何をしでかすか分からない連中だ。警察に頼っても24時間警護はされない。 果たして俺のような貧弱男にやられたと、こいつは口外するだろうか。その可能性は低いと見るのが妥当だろう。ましてや女の子を襲おうとしてやられたなどとは言うはずがない。 だとすると、横槍本人が単独で報復に来ることはあり得るが、仲間を引き連れてはこない。悪いやつらには悪いやつらなりのプライドがある。圧倒的に無様なやられ方をして、仲間に頼る可能性は低い。そうであるなら、単独で報復に来た場合のみ、横槍の気が済むまで俺が殴られればいいだけの話だ。 懸念事項としては、こいつが恨みを募らせて俺を暗殺ないしそれに近い形で殺すことだが、今ごろ昇降口で巨漢どもを倒している中南の活躍により、横槍が関与している事実は広く知れ渡った。このあと俺が傷害で警察から聴取を受けた場合、横槍と巨漢三人の身元は情報として少年課に渡り県警がそれを共有する。元から目をつけられていたかもしれない横槍のグループは、暴力団との関係も捜査されるだろうし、そうなると俺より横槍の方が危険な立場に陥る。 悪いやつらのネットワークは一般人のそれより強く緻密だ。その中心にいる横槍が俺を殺せば、トカゲの尻尾切りをされるのは本人でしかない。保身をするなら単純に俺を殴りに来るだけで、それ以上のことはされない。だから大丈夫だ。最悪の形で、俺が美梅ちゃんから離されることはない。
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