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二人の想い
着衣が乱れ、ぼろぼろと涙を流す美梅ちゃんを見て、俺は抗いきれない衝動に駆られた。
今すぐ抱きしめ、口づけたい。
だが、まだ手も繋いでいないのに、そこまでしていいのか。
ただでさえ怖い思いをした後だ、男への恐怖心が勝るのではないか。
それでも俺は衝動を止められない。血で汚れた手で彼女に触れることが良くないと知りながら、抱きしめずにはいられなかった。
「⋯美梅ちゃん、ごめん」
髪を汚さないように、腕の部分だけで身体を引き寄せる。
「⋯っ、十川、くん⋯っ」
いつも明るく花咲くように笑う彼女がこんなにも泣いている。本当に怖かったろうに、大きく叫びたいだろうに。
「⋯もう、大丈夫だから。安心して。怖くないよ。怖くなんかさせないよ」
彼女が俺の身体をぎゅっと抱きしめた。
そして、思いもよらないことを言った。
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