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チン!と軽快な音を立て電子レンジが加熱終了を伝えてくれる。扉を開き、カチカチからホカホカになった白飯を取り出すし、丼に移す。
レンジに入れる前に炒めておいた、薄切りベーコンをその上にのせる。
次に剥いておいたゆで卵をその上に投入。箸で適当にほぐす。ほぐすというかぐちゃぐちゃになってしまったけど、食べれば一緒だ。
小皿にめんつゆ、醤油、ラー油少々と旨味調味料を振ってスプーンで混ぜる。
作ったタレをぐちゃぐちゃになったゆで卵の上に回しかけ、最後に上から韓国のりを小さく千切ってかければ完成だ。ぐちゃぐちゃのたまごもいい感じで隠れる。
「いただきます」
見た目はあれだが、味は悪くない筈だ。
カリカリに焼いたベーコンとタレが染みた白飯、半熟のゆで卵。それを一緒くたに口の中に入れる。
甘じょっぱいタレが全体に絡み、白飯が進む。空腹感が段々と薄れていく。
一人暮らしをしていた時、たまに作っていた簡単丼だ。これに即席みそ汁で夕飯を済ませた事は何度もある。
大学生になり始めた一人暮らしの時は、お腹が空いても自分が作らなければ満たされることはなかった。
だけど、大学2年生の頃、同じ大学でアパートの隣の部屋に住む同級生の三田村が夕飯を作ったからと誘ってくれるようになった。
それからというもの、週に数回の夕飯に弁当が加わり、夕飯を共にするのがほぼ毎日になり、プロポーズみたいな告白をされ、今では一緒に住む仲になった。大学生の頃の自分が知ったらびっくりするだろう。
同棲してからはほぼ三田村が作る手料理を食べているので、自分で作るのは久しぶりだ。
これが料理と呼べるのかはわからないが、久しぶりだからかベーコンを炒めたり、調味料を合わせタレを作ったりするのは楽しかった。
でも三田村が同じものを作ったらきっともっと見栄え良く出来たに違いない。味だってきっと。
だからといって寝てるのを起こしてまで何かを作ってもらおうという気にはなれなかった。
半分以上食べ進むと大分満足感が出てきた。
ティーパックで作ったお茶を飲み、残りを食べてしまおうと思いマグカップから箸に持ち替えたタイミングでリビングに驚いたような三田村の声が響いた。
「えっ!!香川、何、食べてるの?!」
起こした方がよかったかもしれない。
何だか怒ったような顔の三田村を見て、香川は少しだけ後悔した。
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