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「分かりました。しかし、僕は明後日にはドイツに帰国する予定です。これを逃すといつ帰れるか…。ドイツでの仕事も疎かにできませんからね。答えは明日の夕刻まで待ちます。急がせて申し訳ありませんが、チヨちゃんの考えを聞かせてください」
「一晩しっかり考えます」
しっかり考えることなんてできなかった。
帰宅した途端に、父にぶたれた。
どうやら私がアルベルトさんと話していたのを見た人が報せたらしい。
私は小さな燭台のある蔵に閉じ込められることになってしまった。
婚約者からも「異人に媚びを売る女はいらない」と婚約は破談になったらしい。
結婚しなくてよかったことだけは嬉しい。
「アルベルトさん…」
あの時点で即決しておけばよかった。
大事なことだけど、勢いで決めた方がいい時もある。
私は本当に愚かだ…。
蔵の中は寒くて暗くて埃っぽい。
燭台の蝋燭も頼りない。
月明かりがあるから、そんなに心細くはないけど、これからどうしよう…。
食事は?お手水は?
学校は退学することになりそう。
蝋燭も予備はなさそうだし、早めに寝てしまおう。
アルベルトさんと夢で逢えるといいなぁ…現実ではもう逢えないんだから…。
ふわふわする…夢の中だから?
あったかい…心地いい。
覚めたくないのに、自然と目が覚めてしまう。
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