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「独逸…確か欧州にある国ですよね?後、殿方を呼び捨てにするなんて、そんな失礼なことはできません」
本当はこんなに殿方と話してはいけないのだけど、何故か彼と話すと不思議と安心するのよね…。
「うーん…だったら"アルベルトさん"と呼んでほしいですね。僕も"チヨちゃん"と呼ぶので」
「はい…」
ちゃん付けなんていつ振りかしら?
アルベルトさん行きつけのカフェーに連れて行ってもらい、私の悩みを聞いてもらった。
「そうだったんですね…。だったら、僕とドイツに行きませんか?僕も帰国する予定なので、一緒に」
「独逸に!?私はまだ女学校に通っていますし、父と母が許してくれないと思います。婚約者もいるので…」
「それらを全て捨てる覚悟がなければ連れて行けません。ドイツはとても遠く長い船旅になります。途中で日本に帰りたいと言っても帰れません。それでも行く覚悟はありますか?」
「覚悟…」
独逸に行けば、もう父と母、友人にも会えない。
婚約者からは逃げられるけど、全てを捨てる覚悟は……ない。
「チヨちゃん、迷うなら日本にいた方がいい。ただの渡航じゃない、永住の為の渡航になる。それでも全てを捨てる覚悟がありますか?」
「少しだけ時間をください。安易に決められることではありませんから…」
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