春には稲荷寿司を持って

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付き合っていた彼氏にフラレた。 というか…私は隙間時間の相手だった。 つまり既婚者だったってこと。 指輪の跡も巧妙に隠して…とんだクズ男だわ! 子供が二人もいて、外に女を求めるな! 奥さんが家事育児に仕事までしてたら、おしゃれする時間ないから、最低限の身なりの整え方しかできないっての! 育児やれ、自分の子供だろうが! 何か知り合う男は、こういうクズが多い…私に魅力がないのか、だめんずホイホイなのか…。 もう電話もメールも拒否して消した。 SNS関連は全てブロック。 そこまで徹底したけど、身に付いた料理スキルはなくならない。 あ~別のことも思い出して、全部投げ出したい。 コンビニ寄って、お弁当でも買おうかと思ったけど、がっつり食べる気にもなれないから、稲荷寿司のパックとチューハイを買って家に帰る。 マンションの一人暮らしが急に空しくなる。 クズと付き合っている時は、それなりに楽しかった…クズなのに。 部屋が静かで暗い。 電気点けても暗く感じる。 一応という気持ちで、買ってきた稲荷寿司を食べる。 「稲荷寿司ってこんな味だっけ…?前に食べた時は…あぁ、自分で作った稲荷寿司だから、市販のと味が違うんだ…」 稲荷寿司はクズの好物で、何故か手作りに拘っていた。 今なら「自分で作れや!」と寿司桶を投げ付けるだろうが、当時の私は頑張って作り方を覚えて、手間をかけて作っていた。
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