薄幸乙女は愛される

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「オレはユキ!」 「私は壱玖(イク)。えっと…字の読み書きは習ってないから分からないの…」 「オレ書けるよ!でも漢字分かんないから、片仮名で書くな…「イ」「ク」!これでイクって読むんだ!」 「これが私の名前…?」 格子の嵌まった窓から頑張って外の地面を覗いて、自分の名前の文字を知った。 ずっと座敷牢にいる私は、外の世界のことは何も知らない。 学校に通えないから、文字の読み書きも数字も分からないから、本は読めない。 誰も気にかけてくれない。 一応食事と月に一度お風呂に入れるけど、それも義務でされているだけ。 ユキだけは私を見てくれた。 ユキだけは外の世界を教えてくれる。 私を私として見てくれて嬉しかった。 私は生まれつき色がない。 何故か髪や肌が白く目も赤い。 あまり丈夫な方でもなく、日の光にも弱い。 晴れの天気は好きだけど。 私を産んだ母は髪は茶色でも、目は黒かった。 だから、いくらでも誤魔化しはできる。 私みたいに白いとただ気味が悪いだけだ。 それでも母は私を愛してくれたけど、私同様に丈夫じゃなくて、私が五歳の時に亡くなった。 父はすぐに新しい母を連れてきた。 新しい母は三つになる女の子も一緒に連れてきていて、父と継母の子供…まだ母が生きていた時から付き合っていたことが衝撃だった。
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