春には稲荷寿司を持って

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対価って時点でお願い事はしたくない。 もしかしたら、他の見知らぬ誰かが被害に遭うことがあるかもしれないと思ったら無理。 「ないの?恋愛成就とか、無病息災とか、大願成就…ある程度は叶えられるよ」 こんなことしたって意味がない…馬鹿げているって分かってる。 だけど…私だけ泣き寝入りなんて絶対嫌! 「何でも叶えてくれるなら、私をフッた人に一泡吹かせてほしい。私がスカッとするくらい」 「いいよ。この願いだと、もう少し対価が必要になるけど、何を対価にする?」 「私のこれからの幸せを対価にするわ。それで足りるよね?」 「十分だ。おつりが出るくらいだが、その分の働きはしよう。万事任せておけ。必ずいい結果になるから」 その言葉と共に彼は深幸は消えてしまった。 私は文字通り狐に化かされたのかもしれない。 有給が終わったので会社に行く。 鞄の中には、一応退職願が入っているけど、深幸の言葉を信じて、クズがどういう目に遭うのか見たい気持ちもあって、出そうという気になれない。 クズの言葉は何も信用できない。 呼吸をするように嘘をついて、自分が危うくなると、責任転嫁して逃げる。 あんたより、人間じゃない深幸の言葉の方が信用できる。 だから、今は深幸を信じる。
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