春には稲荷寿司を持って

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「どういうこと?」 「あの男の家族にも術は効いている。あの男が家族と繋がりの深いものを何か持っていたら、それにも術がかかる。たとえば…指輪とか写真とかね」 「狐のこと…ちょっと見方が変わるかも」 「普通の狐にはできないよ。ある程度の妖力とか霊力がないと」 「何か色々凄いってことだけ分かったよ…」 「あはは。そういう認識でいいと思う。深く考えても、結局は不思議なことで片付いちゃうしさ」 あっけらかんとした口調と無邪気な笑顔は、私をひどく安心させる。 何故か涙が溢れて、止まらずに頬をずっと濡らす。 「ご、ごめん…涙止まんない…」 「好きなだけ泣いていいよ。無意識に泣くのを我慢してたんだね…。大丈夫、大丈夫だよ」 深幸がふわりと優しく包むように抱きしめる。 手は触れないけど、この包み込まれる感じは、凄く心地よくて癒されてる気がした。 朝、会社内はみんなバタバタしていた。 チラッとクズの席を見ると、深幸の言った通り、真っ白に燃え尽きていた…一晩であんなになることがあったってこと? 「河野さん、何かあったの?えらく憔悴してるみたいだけど…」 「知らないの?河野さん離婚騒動で、もう離婚確定らしいよ。不倫相手の新卒の子を妊娠させたんだって」 「うわ…そりゃ離婚よね…」 「それだけじゃなくて、奥さんも浮気してて、子供はその浮気相手の子供で、河野さんは托卵先ってことみたいよ」
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