鬼に盗まれた姫君

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最近、安清(ヤスキヨ)様が訪ねてこなくなった。 文もちっともない。 私は安清様に飽きられたのか…離縁されてしまったのか…何も分からない。 安清様が喜んでくれた襲(カサネ)も何度着ても、安清様が見てくれないなら意味がない。 私は…ただの飾り? 家名がある人形? 人間として見られているの? 殿方は自由でいいわね…。 私も来世は男に生まれて何にも縛られず生きたい。 「今日もいらっしゃらないし、文もないのね…」 「姫様、もうお休みになられては…」 「ありがとう阿漕(アコギ)。もう少しだけ月を見ていたいから、まだ起きていたいの。大丈夫よ、きちんと眠るから…」 「分かりました。あまりご無理をなさいませんように。何かあればすぐにこの阿漕をお呼びください」 「ええ、ありがとう」 阿漕を心配させて、本当に申し訳ないわ。 本当なら、阿漕ももっとゆっくり暮らせたはずなのに…。 安清様がここにこなくなってから、私はお父様にひどく叱責された。 だけど、夜しかこない人に…閨に入ることが目的の人に…これ以上、何をどう尽くせばいいのか分からない…! 「誰か私を遠くに連れて行って…。かぐや姫なら月に帰れたのに…」 「なら、遠くへ連れ去ろうか?」 「えっ?誰?」
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