薄幸乙女は愛される

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私は継母と継妹にも気味悪がられ、人目につかない座敷牢で暮らすことになった。 ぼんやりすごすしかない私に新しい風を吹き込んでくれたのは、偶然通りかかったユキ。 私を見ても気味悪がったり、驚いたりしない。 実はユキには内緒だけど、私はユキのことが好きだった。 大人になれば、結婚したいと密かに思うくらいは好きだった。 ただユキはどこの誰かも分からなかったし、小学校は通っていることは何となく分かる。 何度桜の季節が巡ったか…。 私は座敷牢から離れに移された。 座敷牢は蔵を造るから、私がいては邪魔なんだそう。 離れに移ってからは、朝や昼の太陽の明るさにびっくりした。 明るい日光の中で咲いている草花も色とりどりで美しい。 「壱玖さん、良ければ庭に出ませんか?」 「幸彦(ユキヒコ)さん…」 彼は山遠理 幸彦(ヤマオリ ユキヒコ)さん。 ここの書生で、勉強を頑張っている。 ユキに逢えなくなって、幸彦さんが家にきたのが去年。 名前が共通した部分があって、ちょっとだけときめいてしまった。 ユキはある日を境に、私に逢いにこなくなった。 やっぱり姿が気味が悪かったのかもしれない。 好きな気持ちは封印して、私に文字を教えてくれたことを感謝することにした。 忘れられないけど…。 「壱玖さん?あまり加減が良くない?お粥か白湯を用意しようか?」 「いえ、今日は部屋の中がいいの。体調も悪くないから大丈夫ですよ」
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