できそこないの巫女は桜に舞う

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私は儚(ハカナ)。 山奥の社で巫女をしている。 私は生まれた時から、右側のこめかみから耳の下に蛇のような肌で、今は背中やお腹や足に巻きついた蛇のような肌になっていて、人前に出られなくなった。 幼い頃にこの社に住み始めたけど、ここにやった両親の判断は間違ってなかったと思う。 自分でも気味悪いと思うから…。 「やだ儚ちゃん、また辛気臭い顔して。ねぇ、この打掛もらっちゃったの!いいでしょ~?」 「閑(シズカ)…。ええ、素敵な打掛ね…」 鮮やかな赤い生地に色とりどりの繍(ヌイトリ)があって、本当に素敵。 それを纏う閑も私と同じ巫女だけど、華やかで光輝く笑顔で周りを幸せにする巫女。 しかもここで祀る麒麟様の寵愛を受けている。 私は寵愛は元より恩恵の欠片も受けたことはないので、神様全てに嫌われているのかもしれない。 閑の打掛はたぶん麒麟様にもらったのだろう。 私達の巫女の力が強ければ強いほど人の姿を取って具現化する。 麒麟様は閑の力でまばゆいばかりの美しさを持つ青年の姿だ。 麒麟様の名残として角は残ってしまうみたいだけど。 二人(でいいのかしら?)が並ぶと、本当にイザナギ様とイザナミ様のような神々しさがあって、私はひれ伏しそうになる。
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