できそこないの巫女は桜に舞う

3/8

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
何か閑と麒麟様は結婚して夫婦になるんじゃないかと思う。 とってもお似合いだし、お互いに想い合っているもの。 私にはそんな人や神様なんていないから、ずっと社で巫女として祈るだけ。 こんな姿じゃ社の外にも出られないじゃない。 閑はちょっとだけ私を馬鹿にするけど、それをされても仕方ないと思ってしまう。 巫女の実績があるから…。 私は夜に社の外に出る。 夜は誰もいないし、灯籠もそんなに明るくない。 いつ誰にもらったか分からない舞扇を持って、桜の大樹のある場所に急ぐ。 あんまり長い時間いないと、閑が麒麟様や他の人に言いふらしてしまうから…。 月明かりで桜の花びらが夜風に舞うのが見える中、何度も練習した神楽舞を踊る。 ほとんど分からないけど、何とか見て覚えた部分だけ繋ぎ合わせて踊る。 私がこんな姿じゃなかったら、夜にでたらめな神楽舞を踊る必要はなかったのに、何でこんな醜い姿なの? 前世で極悪人だったとか? 悲しくてやりきれない思いで涙が溢れるけど、それでも踊る。 泣けばすっきりするし、踊れば何も考えなくて済むから。 「見事な舞だ。随分と馳走になった。娘よ、舞の礼に何か願いを一つ叶えてやろう」 いきなり声をかけられてびっくりしたけど、今の時間はここは誰もいないはずなのに…!
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加