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何か閑と麒麟様は結婚して夫婦になるんじゃないかと思う。
とってもお似合いだし、お互いに想い合っているもの。
私にはそんな人や神様なんていないから、ずっと社で巫女として祈るだけ。
こんな姿じゃ社の外にも出られないじゃない。
閑はちょっとだけ私を馬鹿にするけど、それをされても仕方ないと思ってしまう。
巫女の実績があるから…。
私は夜に社の外に出る。
夜は誰もいないし、灯籠もそんなに明るくない。
いつ誰にもらったか分からない舞扇を持って、桜の大樹のある場所に急ぐ。
あんまり長い時間いないと、閑が麒麟様や他の人に言いふらしてしまうから…。
月明かりで桜の花びらが夜風に舞うのが見える中、何度も練習した神楽舞を踊る。
ほとんど分からないけど、何とか見て覚えた部分だけ繋ぎ合わせて踊る。
私がこんな姿じゃなかったら、夜にでたらめな神楽舞を踊る必要はなかったのに、何でこんな醜い姿なの?
前世で極悪人だったとか?
悲しくてやりきれない思いで涙が溢れるけど、それでも踊る。
泣けばすっきりするし、踊れば何も考えなくて済むから。
「見事な舞だ。随分と馳走になった。娘よ、舞の礼に何か願いを一つ叶えてやろう」
いきなり声をかけられてびっくりしたけど、今の時間はここは誰もいないはずなのに…!
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